原発を水素供給源とする視点示せ 日本のエネルギー計画
30年度の電源構成見通しがすでに「黄信号」
別表の(1)は、現行の第6次計画(2021年10月閣議決定)が提示した30年度の電源構成の見通しを示している。しかし、この見通しの実現にさえ「黄信号」がともっている。
2030、40年度の電源構成見通し
(1)2030年度の電源構成見通し ・再生可能エネルギー 36~38% ・原子力 20~22% ・水素・アンモニア火力 1% ・天然ガス火力 20% ・石炭火力 19% ・石油火力 2% (2)2030年度の電源構成の実際 ・再生可能エネルギー 30% ・原子力 15% ・水素・アンモニア火力 1% ・天然ガス火力 32% ・石炭火力 20% ・石油火力 2% (3)2040年度の電源構成見通し ・再生可能エネルギー 45~50% ・原子力 25~30% ・水素・アンモニア火力 5% ・天然ガス火力 20% ・石炭火力 0% ・石油火力 0% 筆者作成。 *(1)は第6次エネルギー基本計画による数値。(2)、(3)は筆者の推計値。
再生可能エネルギーで伸び代が大きいのは風力であるが、22年度末の導入実績は陸上5.1ギガワット(GW)、洋上0.1GWにとどまり、リードタイム(計画着手から完成までの期間)の長さから考えて、陸上17.9GW、洋上5.7GWという30年度の導入目標達成は難しい。電源構成における原子力の比率を20~22%とするには27基の原子炉の稼働が必要となるにもかかわらず、現時点で12基しか再稼働していない。30年度時点ではせいぜい20基稼働がいいところだろう。別表の(2)では、筆者が独自で推計した値を示した。30年度の電源別構成では再生可能エネルギーは30%程度、原子力は15%程度に過ぎない。水素・アンモニア火力の1%を合わせても、非化石電源の比率は46%程度にとどまるとみられる。 こうした状況は、じつは政府も認識している。法的義務を伴うエネルギー供給構造高度化法(高度化法、エネルギー供給事業者に非化石エネルギーの利用を促す法律)の実際の運用に、その認識が端的な形で表れており、政府の「欺瞞(ぎまん)」が垣間見える。 別表の(1)にあるように、30年度における非化石電源の比率を59%(再生可能エネルギー36~38%+原子力20~22%+水素・アンモニア火力1%)と見通したのだから、本来なら高度化法で義務づける非化石電源比率も59%に高めなければおかしい。 ところが現時点においても、同法による非化石電源の義務づけ比率の下限は、第5次計画に平仄を合わせた44%に据え置かれているのである。30年度までに非化石電源比率を59%へ引き上げることは困難であり、40%台半ばが精いっぱいだと、政府自体も見通しているからにほかならない。 30年度の電源構成見通しが実現困難になっている現状に、さらに「厳しい前提条件」が課されるのであるから、第7次計画において40年度の見通しを策定することは「無理筋」ともいえる。前提条件を満たすためには、別表の(3)で示した電源構成見通し(筆者推計)を提示せざるをえないが、実現性は極めて低い。 (3)が示す見通しのなかで最も現実離れしているのは、「原子力25~30%」という数値である。第6次計画では、30年度の電源構成見通しについて現実との乖離(かいり)を意識して「野心的」という言葉が使われた。その乖離が大きくなる第7次計画の40年度見通しは、もはや「空想的」と言わざるを得なくなる。