【東京・市ヶ谷】活版印刷の歴史を学ぶ施設と三島由紀夫の記憶が残る建造物へ。|甲斐みのりの建築半日散歩
〈市谷の杜 本と活字館〉
●東京都新宿区市谷加賀町1-1-1 TEL 03 6386 0555。10時~18時。月・火曜休(祝日の場合は開館)、年末年始休。入場無料。
●昭和史に刻まれる歴史的建造物が見られる「防衛省・市ヶ谷台ツアー」。
市ヶ谷台の丘陵地に庁舎や電波塔が建ち並ぶ防衛省の広大な敷地は、かつて尾張徳川家第2代光友公が、第4代将軍家綱公より5万坪の土地を拝領し、江戸上屋敷を築いた場所。1874年(明治7)年にその土地を利用して陸軍士官学校が開校し、1941年(昭和16)年には大本営陸軍部、陸軍省、参謀本部が置かれた。1945(昭和20)年の終戦後は米軍に接収され、翌年に大講堂で極東国際軍事裁判(東京裁判)の法廷が開設されたことでも知られる。返還後は陸上自衛隊東部方面総監部などに使用されていたが、2000(平成12)年に当時の防衛庁(現・防衛省)が六本木から移転して現在に至る。
そんな防衛省の敷地内にある歴史的建造物や厚生棟を見学できるのが、平日の午前・午後各1回、2時間ほどかけて実施されるガイド付き「防衛省・市ヶ谷台ツアー」。午後のツアーには戦時中に大本営陸軍部の防空壕として造られた「大本営地下壕跡」(有料)も含まれる。
コース内の大きな見どころは、かつて庁舎A棟の場所に存在した「1号館」を移築・復元した〈市ヶ谷記念館〉。正面玄関にバルコニーが張り出した鉄筋コンクリート造の外観を、歴史的ニュース映像を通して見覚えがある人も多いのは、そこが1970(昭和45)年に三島由紀夫がクーデターを呼びかける演説をした場所であるから。内部には、士官学校時代に天皇陛下の休憩所だった旧便殿の間、士官学校長室や陸軍大臣室、陸軍自衛隊東部方面総監執務室として使われた旧陸軍大臣室、陸軍士官学校の大講堂として作られ、極東国際軍事裁判(東京裁判)の法廷となった大講堂が残されている。激動の昭和史に刻まれる場所に直に立つ得難い時間となった。
防衛省・市ヶ谷地区見学(市ヶ谷台ツアー)
市ヶ谷地区内に所在する庁舎や、極東国際軍事裁判(東京裁判)の法廷となった大講堂などを移設・復元した市ヶ谷記念館を案内するツアー。月曜日から金曜日まで(祝日及び年末年始休暇間を除く)の午前(9時30分~11時30分/2時間)、午後(13時30分~15時50分/2時間20分)各1回の定時見学。午後のコースでは、大本営地下壕跡(有料:700円)も訪れることができる。要事前予約。公式サイトで確認を。 ●東京都新宿区市谷本村町5-1 TEL 03 3268 3111。