実は衰退の危機、「喜多方ラーメン」の復活を目論む男の正体 3000円ラーメンに苦情殺到も「織り込み済み」、今日も伝統を繋げるために奔走中
試食会をして知り合いに食べに来てもらったが、 「こんなものは喜多方ラーメンではない」 と口々に言われた。 麺学校で教えてもらった通りに作ると、スープがきれいになりすぎてしまい、喜多方ラーメンのじんわりとした旨味が出ないのである。 「自分でやりたいという思いが強すぎて、喜多方ラーメンの歴史を無視して作ってしまっていました。 ラーメンらしい雑味を生かしたスープや、チャーシューを煮込んだ醤油をタレに使うなど、喜多方ラーメンが本来持っている良さを生かせずにラーメンを作っていたんです」(江花さん)
お客が来ない日が続く「あじ庵食堂」に老舗の店主たちがアドバイスをくれた。 「ラーメン 一平」の大将・小枝利幸さんはチャーシューの作り方やスープの取り方を教えてくれた。 そして喜多方ラーメンの元祖といわれる「源来軒」の大将・星欽二さんはスープの煮込み時間や灰汁取り、チャーシューのタレの作り方など事細かに教えてくれたという。 「使っている食材は同じでも、まったく違うものができるんです。大将たちが声をかけてくれたことで、ここから喜多方ラーメンの仲間に入れてもらいました。私だけが若かったので、聞けば何でも教えてくれて、本当にありがたく思っています」(江花さん)
その後、味もしっかりと安定し、喜多方ラーメンとして認められ、人気が出てくるようになった。 ■イベントに出店するたび、喜多方ラーメンの衰退を感じ… この頃から、全国でラーメンイベントが盛んに開かれるようになり、三大ご当地ラーメンとも言われる喜多方ラーメンも当然イベントから声がかかるようになってきた。 「あじ庵食堂」は「蔵のまち喜多方・老麺会」からOKをもらい、喜多方ラーメンの代表としてイベントに出るようになった。
張り切って出店したイベントだったが、ここで江花さんは喜多方ラーメンの衰退を感じるようになる。 「毎年出店するたび喜多方ラーメンの力が落ちてきていると感じたのです。都心では旨味を重ねた“足し算”のラーメンが隆盛を極める中、シンプルであっさりした喜多方ラーメンはウケないのです」(江花さん) こうして江花さんは他県のラーメン店とも親交を重ねるようになり、徐々に視野を広げていく。喜多方ラーメンを再び元気にしていくために自ら動き出したのである。