『HOW TO BLOW UP』ダニエル・ゴールドハーバー監督 みんな自分の見たいものしか見ていない【Director’s Interview Vol.413】
見たいものしか見ていない
Q:本作に対する映画人や観客の反応はいかがでしたか? ゴールドハーバー:メディアを通して見るものは、皆自分の見たいものだけ。つまり自分が見たいものを発信しているメディアしか見なくなっている。この映画を見てくださった方も、そもそもこういうことに興味を持っている人ばかりでした。結局今は、政治的な思想を持っていたとしても、自分の考えに近いメディアからしか情報を得なくなっている。社会や政治について議論することに、すごくネガティブな状況になっていると思います。 本作については、FBIから警告が入ったり、議会からの捜査もありましたが、公開中はもっと物議を醸し出すかと思いきや、実際そうでもなかった。そこも驚きましたね。 Q:『現金に体を張れ』(56)や『レザボア・ドッグス』(92)の影響を感じますが、好きな映画監督や影響を受けた作品を教えてください。 ゴールドハーバー:その時々で変わってきますが、アメリカの映画作家だとマーティン・スコセッシとデヴィッド・リンチですね。彼らの作品と同じくらい、その製作のプロセスや、彼らと仲間が起こしたムーブメントなどにも興味があります。他には、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーも大好きだし、リン・ラムジーやクレール・ドゥニなども好きですね。日本の映画作家では、宮崎駿と黒沢清。黒沢監督の新作はとても楽しみにしています。 監督/脚本/製作:ダニエル・ゴールドハーバー ダニエル・ゴールドハーバーは、ロサンゼルスとニューヨークを拠点にする監督、脚本家、プロデューサー。気候科学者の子供であるダニエルは高校時代から映画製作を始め、サンダンス・ドキュメンタリー『チェイシング・アイス』で編集者として働いた。その後、ハーバード大学で映像と環境研究を学び卒業。Netflixのホラー映画『CAM』を監督し、2018年のファンタジア映画祭で最優秀初監督賞を受賞し、FilmmakerMagazineの「2018年の25人の新しい映画人」の一人に選ばれた。刺激的で挑戦的なストーリーをスリリングでアクセスしやすい方法で伝える方法に情熱を持って取り組んでいる。 取材・文: 香田史生 CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。 『HOW TO BLOW UP』 6月14日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、池袋HUMAXシネマズ、シネマート新宿ほか全国ロードショー中 配給:SUNDAE © Wild West LLC 2022
香田史生
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