『HOW TO BLOW UP』ダニエル・ゴールドハーバー監督 みんな自分の見たいものしか見ていない【Director’s Interview Vol.413】
「暴力革命」に対する意識
Q:石油会社への破壊行為によって、労働者が職を失うことに対する言及や葛藤も描かれているのが印象的でした。 ゴールドハーバー:長期的にみれば、環境問題のせいで私たちは食べるものを生産することさえ出来なくなってしまい、最終的には全員が失業します。環境問題や化石燃料に関する議論になると、その業界の失業話が出てくることがありますが、世の中に仕事は他にもあるわけで、それは化石燃料会社の詭弁に過ぎません。我々が新しい世界を作る方法を模索しないように、脅しているのです。クリーンエネルギーのテクノロジーを作り保全していくことが出来れば、それは大きな経済的ムーブメントに繋がります。つまり失業について心配する必要もなくなっていく。そこは是非考えてみて欲しいですね。コラテラルダメージに関連した被害は出てくるかもしれませんが、持続可能なエネルギーモデルを作ることが出来なかったときの痛みに比べれば、大したことはないと思います。 Q:原作本に出会う前の「暴力革命」に対する意識はどのようなものでしたか。 ゴールドハーバー:元々理解はしていました。キャリアの初期には気候変動に関するドキュメンタリーにも関わっていましたし、地球と社会が如何に大きな脅威に晒されているのかを描きながら、何かインパクトのあるキャンペーンをしたいと思っていました。でも当時だと、選挙に行くことと、電気自動車に変えることぐらいしか、人に促すことはできなかった。当時は絶対に解決できない問題だとすら思っていました。人ではなくシステム自体を変えていかなければ解決できない。そのシステムを動かしているのが利潤優先の大企業だと、絶対に状況は変わらないわけです。 過去の歴史を紐解くと、成功した革命やムーブメントには、実は破壊活動みたいなものが関わっている。そのこと自体は知っていましたが、原作本ではそれが学術的な事例と共に、歴史的な文脈の中でどういう立ち位置にあったのかを明確にしてくれていました。特に、環境問題に対処する中では、所有物の破壊がどういう効果があるのかを論じていました。歴史の前例を出して、ターゲットを明確にすることによって、納得いくアクションを教えてくれる本でした。
【関連記事】
- 『蛇の道』黒沢清監督 オリジナルを知っている自分だけが混乱した【Director’s Interview Vol.412】
- 『ブルー きみは大丈夫』ジョン・クラシンスキー監督 大人を虜にするための鍵はノスタルジー【Director’s Interview Vol.411】
- 『ハロルド・フライのまさかの旅立ち』ジム・ブロードベント 過去の記憶を掘り下げるように歩いたよ【Actor’s Interview Vol.40】
- 『東京カウボーイ』井浦新 世界は日本をちゃんと見ている【Actor’s Interview Vol.39】
- 『ドライブアウェイ・ドールズ』 イーサン・コーエン監督&トリシア・クック 型破りな夫婦関係ですべてを一緒に決断 【Director’s Interview Vol.408】