中国の鉄道車両メーカー、スパイ懸念や納入遅れで破談相次ぐ 日本に競り勝ったインドネシア高速鉄道は〝金食い虫〟に『鉄道なにコレ!?』【第64回】
▽「中国の〝債務のわな〟」も 対照的に中国が日本を破ったのがインドネシアの高速鉄道「WHOOSH(ウーシュ)」だ。首都ジャカルタと西ジャワ州の州都バンドン郊外の間で2023年10月に開業し、中国中車が製造した最高時速350キロの列車が片道約40分で結ぶ。開業時の駐インドネシア中国大使だった陸慷氏は中国メディアに「『一帯一路』構想のもたらした現実的な成果によって、インドネシア国民の対中理解も深まった」と豪語した。 満足げな中国の反応とは裏腹に、インドネシアにとっては誤算が相次いだ。開業は当初予定より4年遅れ、総事業費は約108兆ルピア(1ルピア=0・01円で約1兆800億円)と当初想定より約18億ドル(同約1800億円)も膨らむ〝金食い虫〟となった。中国の当初提案に反してインドネシアは国費投入も余儀なくされており、借金漬けに陥らせる「中国の〝債務のわな〟に陥る可能性がある」(地元英字新聞ジャカルタ・ポスト)と不安視されている。
新幹線技術の導入を目指していた日本はインドネシア側の財政負担を軽減するため、総事業費の75%を金利0・1%の円借款で賄うことを提案していた。ただ、事情通によると「インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は政府の歳出を嫌気し、日本側が政府にも負担を求めたことに難色を示した」とされる。 これに対し、中国はインドネシア政府による国家負担も、借金の政府保証も求めなかった。ジョコ政権は2015年に中国を選び、日本政府関係者は「青天のへきれきだ」と肩を落とした。 ▽追加融資では金利4%を要求 ところが、建設のために設立されたインドネシア企業と中国企業の合弁企業に対し、中国の国家開発銀行が2017年に融資した金利は2%に上った。 ロイター通信によると、総事業費が膨らんだことに伴う23年の追加融資で国家開発銀行は当初4%もの金利を要求した。その後3・4%に下げたものの、インドネシア側が要求した2%を大きく上回った。