誰もが笑顔になるように。お菓子に託すピエール・エルメの想い
2023年秋、25周年を迎えたパティスリー、ピエール・エルメ・パリ。パリに先んじて、世界初のショップを日本にオープンするほど、日本との絆が深いパティスリーでもある。この四半世紀、お菓子を通して、人々とどのようにつながろうとしてきたのか。来日したピエール・エルメさんに話を聞いた 【写真】ピエール・エルメのマカロン
ピエール・エルメ。4代続くアルザスのパティシエの家系に生まれ、14歳のときガストン・ルノートルの元で修業を始める。創造性あふれる菓子作りに挑戦し続け、独自の“オート・パティスリー”(高級菓子)のノウハウ伝授にも意欲を燃やす
14歳でルノートルのもとで修行し、フォション、ラデュレのお菓子作りに関わってきたピエール・エルメが大切にしていることは、ひとつ。お菓子で人々を笑顔にすること。だから、砂漠へ、北極圏へ、そして宇宙空間へと、過酷な環境のもとにもの自身のマカロンを届ける。そのためには労力をいとわない。 2017年、国際宇宙ステーションの宇宙飛行士トマス・ペスケさんを甘いマカロンで喜ばせようと、宇宙空間にマカロンを送った際には新たなマカロンづくりに一年を費やした。というのも、宇宙ステーションに持っていくためにはアメリカ国立航空宇宙局(NASA)から細かな条件が提示されたから。 「長期に及ぶミッションのため、賞味期限は6か月以上であること、一口で食べやすく、頬張ったときにぼろぼろと砕けないこと。無重力空間でマカロンの生地が崩れて飛び散ちり、宇宙ステーションの精密機材の間に入ったりしたら、大変なことになりますから。また、宇宙飛行士が喉を詰まらせる危険も避けなくてはなりません。 ゆえに、マカロンのメレンゲは通常より長く焼き上げ、鮮度が求められるクリームの代わりにゼリーのフィリングとし、一口で食べることができるように通常のマカロンより小ぶりの直径3センチのサイズに落ち着きました」と、ピエール・エルメさん。