誰もが笑顔になるように。お菓子に託すピエール・エルメの想い
お菓子はたらふく食べなくていい。ひとつ食べただけで満足できればいい。でも、いつでもどこでも、どんなときでも食べられることーー。そんな思いを胸にお菓子作りに向き合うこと25年。そのまなざしは、病の関係で思うように甘いお菓子を食べることができない子どもたちにも向けられてきた。 19年前、難病をわずらう子どもたちの医療や暮らしを支えるNPOを支援しようと、パリのピエール・エルメ・パリのブティックで始めたのが「マカロンデー」だ。 「お店に来たお客さんにマカロンひとつを無料で振る舞い、お客さんの任意による募金をNPOに届けるというチャリティーイベントです」 お菓子を口にすることができない子どもたちの力に少しでもなりた。そんな思いから始まったこの「マカロンデー」は毎年開催されている。日本においては「認定NPO法人 難病のこども支援全国ネットワーク」の活動の支援につながっている。
近年、力を入れて取り組んでいるのが、“味わう楽しみと感動"と良識ある"低カロリー"を両立させたスイーツ”の開発だという。 「健康上、食事制限を余儀なくされる人にも、甘いもので幸せを感じてもらいたいので、通常より30%糖分を控えたスイーツの研究開発を進めています。乳製品の摂取を控えている人にも味わってもらいたいから、プラントベースのスイーツにも力を入れています」。 誰もが心置きなく、甘いものを食べる喜びを感じてほしい。そんなピエール・エルメさんの思いからイノベーティブなお菓子が次々と誕生しつつある。
お菓子でひとを笑顔にしたい。その思いはピエール・エルメ・パリが放つエンターテインメント性において体現される。 「私は1989年から建築家、詩人、写真家、アーティストなど、お菓子以外のフィールドで活動するクリエイターとの対話を重ねてきました。ダイアログを通して、そうしたクリエイターのみなさんから独創的な表現が生まれました」 それらはピエール・エルメ・パリの店舗を包むアートワークやお菓子のパッケージとなって人々の心を捉えてきた。 たとえば2016年、一年を通してピエール・エルメ・パリの店舗からマカロンのパッケージを飾ったのが、日本在住のフランス人アーティスト、ニコラ・ビュフのファンタジー溢れる絵画作品だった。ギリシア神話やマンガ文化、及びルネサンス芸術を着想源に、ビュフが描き下ろした空想上の「太陽の王国」と「月の王国」の物語は、季節ごとのパッケージに展開された。 物語はピエール・エルメ・パリのグローバルウェブサイトで少しずつ公開された。ユーザーがインタラクティブに物語の世界観を楽しめる仕掛けがそこかしこに用意され、ストーリーの次の展開を心待ちにするファンも多かった。自由な発想から生まれるエンターテインメント性が、ピエール・エルメ・パリのおいしいお菓子にさらなる楽しみと付加価値を与えているのだろう。 問合せ先 ピエール・エルメ・パリ青山 BY KANAE HASEGAWA