羽生が立ち向かう6分間練習のトラウマ
フィギュアスケートGPシリーズ第6戦・NHK杯(大阪・なみはやドーム)に強行出場し、4位となった羽生結弦(ANA)がフリープログラムから一夜明けた30日、あらためて大会を振り返った。 「自分のすべきことに集中できなかった」「精神的なものをコントロールできなかった」など、いくつか挙げた“敗因”の中に、新たに出てきた要素があった。 「6分間練習でビビリがあった」ということだ。 NHK杯のフリーでは、閻涵(えんかん=中国)との衝突による負傷直後に行った中国杯の154・60点にも届かない、151・79点という点数がついた。今回は、中国杯での負傷により、その後2週間近く休養を取ったため、練習を再開してからわずか1週間余り。確かに、完全からはほど遠いコンディションである。とはいえ負傷そのものは着実に良くなっており、痛みそのものも当時と比べれば軽減されている。 なぜ中国杯を上回ることができなかったのか。要因の一つが、羽生が「ビビリ」と表現したメンタル面の恐怖感だった。 羽生は、「6分間練習では、落ち着こうとしているのだけど、トラウマではないが、やはり周りを見なければいけないという潜在意識があった」と語った。 今回は側頭部、顎、太腿、腹部など5カ所にけがを負い、車いすで帰国したほどのアクシデントに見舞われてから最初の試合。演技内容に合わせた位置でジャンプの確認を行う6分間練習では、中国杯のことを思い出さずにいられるはずがなかった。 フリーでの6分間練習中の心理状態を尋ねられた羽生は、「(ぶつかりたくないという気持ちが)なかったかと聞かれれば、あったかなと思う」と小さくうなずき、詳細を説明した。 「特に(閻涵と)ぶつかった軌道の(3回転)フリップの前は、本当ならジャッジサイドを見ていてから前に行くのだが、ジャッジサイドを見ることができず、ずっとバックを見ていた。それで(本番で)パンクしてしまっていた。弱冠の迷いというか、言ってみればビビリみたいなものがあったのではないかと思う」 トラウマという深刻な言葉は否定したが、やはり恐怖感が頭をもたげてしまっていたというのが現実だ。