20Wで動く「人間の脳」模倣、新型素子開発 AI電力を100分の1に、TDK
TDKは2日、人間の脳を模倣して超低消費電力化を図るニューロモルフィック素子「スピンメモリスタ」を開発したと発表した。電子が持つ微小な磁気「スピン」を活用したスピントロニクス技術を応用。今後、この素子を活用してAI(人工知能)の消費電力を100分の1に低減することを目指す。産学官の国際連携で開発を推進する。 【関連写真】新型素子を搭載したセラミックパッケージ 人間の脳は約20Wで動作している。現在のデジタルAI計算と比較すると、より複雑な判断を行うことができる超低消費デバイスといえる。ニューロモルフィックデバイスは、人間の脳のシナプスとニューロンを電気的に模倣した製品の実現を目指したものだ。 TDKがスピントロニクス技術を用いて開発したスピンメモリスタは、従来のデジタル記録素子に対し、脳と同じようにアナログで記録できる。これにより、脳で行っているような複雑な演算処理が低消費電力で実行可能となる。 これまでのニューロモルフィックデバイスに使用されているメモリスタは、抵抗の経時変化や正確なデータ書き込みには制御が困難などの課題があった。スピンメモリスタはそれらの課題を解決できる素子として、耐環境性と安定した記録動作が期待できる。 開発したスピンメモリスタは、フランスの原子力・代替エネルギー庁(CEA)の協力により、ニューロモルフィックデバイスの基本素子として機能することが実証された。今後は実用化に向けて東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センターと連携し、「2030年頃を目途に実用化を目指す」(同社)。AIが抱える「膨大な電力消費」という課題の解決につなげたい考えだ。
電波新聞社 報道本部