否定するのは作らない側の人──料理研究家リュウジがうま味調味料にこだわる理由
うま味調味料の合理性を、料理は手間をかけるべしという道徳観が排除する。 「でもね、人って美味しい物を食べるために料理するじゃないですか。そこに手間って一つもいらなくないですか。だって手間って、別に美味しさとかじゃないですもん。美味しい物を作るために手間が必要なわけであって、手間をかけるために、美味しい物を作るわけじゃないので」 ネットでは中華の合わせ調味料を使うことの是非について定期的に論争が起き、以前は「母親がお惣菜のポテトサラダを買ってもいいか論争」もあった。 「だったらお前が作ればいいんじゃないのって、だけの話ですけどね。作んない人が言うんですよね、それ。いっつもそういうの否定する人って、作んない側の人なんですよ」
台所に立つ、って孤独なんです
リュウジさんは「根本的に料理が家事としてひとまとめにされていることがある」という。 「家事って料理・洗濯・掃除が代表的ですが、料理だけ正解がない。洗濯や掃除はきれいになるという正解があります。でも料理は相手に食べさせるという過程があって、何が正解かは食べた人が決める。『今日は胃の調子が悪いから脂っこいものは嫌だ』と言われたらその通りに作るし。これはどんな一流料理人にも難しいですよ。その中で(うま味調味料など)使えるものは何でも使っていけばいいということです」 ちなみにリュウジさんに「クレーム」を付けてくるのは年配男性が多いかと思いきや、そうでもないという。 「よく『主婦の味方ばかりしやがって』とか言われるんですが、女性でも批判してくる方はいます。逆に僕のYouTubeチャンネルの登録者で65歳以上の方は10万人はいます。僕自身、料理に関して男性とか女性とか言ったことないですもん」 そうやって情報発信をしていると、SNSのダイレクトメッセージなどで「いままでうま味調味料を使うことに罪悪感がありました。ありがとうございました」と反響が届くようになってきた。とくに「夫にリュウジさんのチャンネルを見せたら、面白がって料理を初めて作ってくれました」という報告がいちばん嬉しいという。