政権公約に記載は2党のみ したたかさ足りぬ経済政策 スタートアップは夢の応援ではない
「スタートアップ支援」は、「若い人が頑張るのを応援しよう」という話ではない。スタートアップは経済成長のドライバーだ。世の中にまだないものを生み出し、社会に変革をもたらす。世界市場でニーズをつかめば、GAFAMがそうだったように、自国経済をけん引する存在にもなりえる。それゆえに、海外では大化けするスタートアップを引き寄せようと、支援策を競っている。日本では、こぶりな成功で国内にとどまるスタートアップが多く、経済全体にインパクトを与える可能性が認識されづらいが、ようやく政府もエコシステム作りに歩みだした。選挙戦では、目先の物価高対策には熱が入るが、「将来日本が何で食っていくのか」の絵が見えない。スタートアップ支援策は継続するのだろうか?(解説委員・安藤佐和子)
◆GAFAMを生み出せ
競争が激化する「スタートアップ」のハブ(拠点)づくり。アメリカのシリコンバレーや中国の深センのように、「起業家」、研究開発を行う「大学や研究機関」、資金を出す「ベンチャーキャピタリスト」たちが集まり、事業の種が社会実装されていくような、いわゆる「エコシステム」をつくろうという取り組みが世界のあちこちで行われている。 日本政府も2028年度以降に東京の渋谷区と目黒区にまたがるエリアにエコシステムを稼働させるという「グローバル・スタートアップ・キャンパス構想」に取り組んでいる。スタートアップ輩出を重視する理由は明白だ。アメリカ経済を見れば、けん引しているのはスタートアップから大きく伸びた企業ばかり。世の中にまだない技術、商品、サービス、システムを生み出し、社会や企業の課題の解決や、人々の暮らしを便利に、豊かにするスタートアップは、経済のドライバーだ。しかし、日本ではまだ、ユニコーンといわれる大勝ちしたスタートアップの姿はほとんど見られない。 こうした中、政府は時価総額1000億円を超えるユニコーンを今の10倍の100社誕生させることを国の方針として決定している。選挙後に国の運営を担う新たな政権も、スタートアップを後押しする政策をとっていくのだろうか。衆議院選挙に向けた政権公約の中に、「スタートアップ」「起業」「ベンチャー」といった言葉が、2党をのぞいては見られなかったことが気になる。