「18トリソミーのわが子を受け入れて育てていく」“のんちゃんの笑顔”がくれる家族の前向きな選択【低出生体重児・18トリソミー体験談】
「のんちゃんのペースでいいよ」と、上の子が妹を見守ってくれる
6歳のお姉ちゃんは、18トリソミーという先天性の障害を持って生まれた妹の望ちゃんのことを「一緒に過ごしていく時間の中で、少しずつ理解していった」と、中須賀さんは感じています。たとえば保育園に行っていた当時、「お友だちの妹は、のんちゃんと同じ2歳だけど、もう立って歩いているよ?」と、周囲の子どもたちと妹の違いに違和感を抱いたこともあったといいます。 「そういう違和感や疑問を抱いたタイミングで、私のほうから望の心臓の病気のこと、障害を持って生まれてきた話を少しずつ伝え続けてきました。最近では、「のんちゃんは、のんちゃんのペースでいいんだよ」と声がけしてくれるようになりました。姉妹で対等に遊べないさみしさもあると思うんですけれど、ごく自然に妹の障害を受け入れてくれています」(中須賀さん) また、「お姉ちゃんは望ちゃんを通して、世のなかにはいろんな人がいると多様性を受け入れるようになった」とママは感じています。「この人は心が女の子で、体は男の子なんだね」「あの子ものんちゃんと同じ管が入っているね」など、6歳なりに、ごく自然と受け入れるようになったのです。 望ちゃんはお姉ちゃんに遊んでもらうと、うれしそうにニコニコと笑うので、お姉ちゃんは妹がかわいくてたまらず、「私がいちばん好きなのは、のんちゃん!」と常に言っているのだとか。お姉ちゃんがお手紙ごっこをするとき、「のんちゃん、大好き」と書いている姿をほほ笑ましく思う中須賀さんです。
周囲の人たちはママとパパの選択を見守ってあげてほしい
「望は3歳になったばかりですが、この3年間を振り返って、“人生というのは選択の積み重ね”だなと実感しています。『18トリソミーのわが子を受け入れて育てていく』と決めたときは本当に悩んで、苦しんで、涙も流したけれど、私たち夫婦にとっては前向きな選択でした」(中須賀さん) 実は当時、中須賀さんの選択に対して、周囲からはいろんな声がありました。「今の医学はやりすぎてない?」「生まれたあとの予後が長くないかもしれないのなら、一緒の時間を過ごすことで情がわいて、かえってつらくなるんじゃない?」など、どの言葉も決して悪気があったわけではなく、善意で伝えてくれた言葉と理解はしていたものの…。それらの言葉に傷つき、涙した日もあったのです。 「やはり当事者にしかわからない気持ちや背景があると思うんです。『これが正解』という選択はないし、『自分が考え抜いた末の選択が、自分にとっての正解』になるんじゃないでしょうか。出生後に『心臓の手術は受けるか? 』『もしものときに延命処置はするか? 』など、ママとパパは悩み、苦しみ、前向きに答えを出していきます。もしも周囲に、障害を持つ赤ちゃんを産み育てる決意をした人がいた場合は、寄り添ってあげてほしいと思います」(中須賀さん) 中須賀さん自身、望ちゃんの予後に関する選択を経験したことで「人生感が変わった」と実感しています。「たとえばこの先、上の子が自分で選んでいく人生で、彼女が悩んで決めたことなら、親として反対したい気持ちがあったとしても、まずはわが子を尊重して寄り添っていこう」と考えるようになったのです。 「私自身の18トリソミーの予後に関する選択については、『これでよかったんだ』と思っています。望が笑顔を振りまくたびに、私たちの両親もふくめ、家族みんなが笑顔になります。“のんちゃんの笑顔”に、私たち家族のほうが助けられています」(中須賀さん) 取材・文/大石久恵、たまひよオンライン編集部 ●この記事は個人の体験を取材し、編集したものです。 ●記事の内容は2024年5月の情報であり、現在と異なる場合があります。 低出生体重児専用のベビー服ブラント「LIKO」では、さらなるサイズ展開も検討中とのこと。妊娠中に18トリソミーの診断を受けてから、さまざまな判断を迫られ、その都度自分の気持ちを見つめ、パパと一緒に選択してきた中須賀さん。望ちゃんの笑顔についてのお話をするときの表情がとても優しく、印象的でした。 「 #たまひよ家族を考える 」では、すべての赤ちゃんや家族にとって、よりよい社会・環境となることをめざして様々な課題を取材し、発信していきます。
中須賀舞さん
PROFILE 服飾専門学校を経て、10年間アパレル販売員を経験。2017年に1人目、2021年に2人目を出産。妊娠8カ月のとき、18トリソミーと診断を受けた次女・望ちゃんが1780gで誕生した経験から、低出生体重児専用のベビー服ブランド「LIKO」を立ち上げる。 https://likobaby.com/
たまひよ ONLINE編集部