5時間の一大エンターテインメント! 田中俊介・須賀健太・坂口涼太郎が誘う“江戸のテーマパーク” 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』
河竹黙阿弥の傑作を、現代に鮮やかに蘇らせる──。木ノ下裕一監修・補綴、杉原邦生演出による木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』(さんにんきちさくるわのはつがい)。9月15日(日)、いよいよ東京で幕を開ける本公演より、和尚吉三、お坊吉三、お嬢吉三を演じる田中俊介、須賀健太、坂口涼太郎にインタビュー。“キノカブ”ならではの「完コピ稽古」の感想やそれぞれの役柄についてどんなふうに“現代化”されるのかなど、たっぷり語っていただいた。 【全ての写真】田中俊介、須賀健太、坂口涼太郎の撮り下ろしカット
役作りのベースとなった完コピ稽古
──田中さんと須賀さんはキノカブ初参加、初めての完コピ稽古の感触はいかがでしたか。 田中 本当に自分にとって有意義な時間だったと感じています。完コピ稽古の段階で、自分が取り組む役はどういったキャラクターなのか、どんな気持ちの流れなのかを深く掘り下げることができましたから。当初、完コピ稽古と上演台本の芝居は全くの別物と思っていたので、「ふたつもなんて時間がたりない!」と焦っていましたが、むしろ完コピをしたことで、よりスムーズに上演台本の稽古に入っていくことができました。 須賀 当初は、古語の台詞がなかなか頭に入ってきませんでした。通常の会話の台詞であれば、そこで何を言いたいのかということを覚えれば割とすんなり入ってくるものですが、それができなかった。文字面が、まるで記号のように見えてしまうんです。が、完コピ稽古を重ねることで少しずつ脳が慣れて、覚えやすくなっていったんです。また歌舞伎俳優さんの映像をよく見ると、実は人によって演じ方がだいぶ違うということもわかってきました。僕がコピーした役は、たっぷり時間をかけて、かなりゆっくりと喋るんです。まだ「俺のターンだ!」と(笑)。最初は困惑しましたが、次第に度胸がついてきました。上演台本でもそこは引き継いで、役作りのベースにしています。とても有益で、収穫のある稽古でした。 ──坂口さんは『勧進帳』(2014年初演)で完コピ稽古を経験されていますが、その意義をどのように捉えていいますか。 坂口 まず枠を作り、それから中身を埋めていく、という作業だと感じています。歌舞伎には、代々受け継がれてきた、研ぎ澄まされた型がある。まずはそれを身体に入れる。それはもう、マシンのように。それが身体に馴染んでくると、どんどん中身が埋まってきて、今度はその型が花火みたいにパーンとぶち壊れて、心が動いて、自分の感情とかオリジナリティのようなものがあふれ出てくる! 「私はこうやりたい!!」と。 田中 それはものすごく感じました。同時に、あれだけの時間をかけた完コピ稽古で得た基礎は、これからも守っていかなければいけない、と考えています。加えて、自分が演じる和尚──このふたりが惚れてくれる、ついていきたいと思えるような、兄貴分的なカッコよさを作らないといけない。さらに、今回は5時間の舞台になりますから、固い芝居をやり続けたのではどうしても疲れてしまう。崩せるところは崩しながら、芯のある、逞しくて頼りになる、それでいてコミカルでちょっと可愛げがある、そんな魅力的な一面も出していけたらなと思って、いま、取り組んでいます。 ──髪型も“和尚スタイル”にされて! 田中 稽古初日から、です。 須賀 今日も剃りたてですか? 田中 もちろん。風呂場で台詞を言いながら──。修行僧みたいですね(笑)。