5時間の一大エンターテインメント! 田中俊介・須賀健太・坂口涼太郎が誘う“江戸のテーマパーク” 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』
この世界の生きづらさ、苦しさを抱えた3人
──稽古場での木ノ下さん、杉原さんについても教えてください。 田中 邦生さんは役者ファーストで考えてくださる方。こんなことは経験したことがないのですが、我々のこの稽古場では、一段落つくと絶対に拍手が起こるんです。木ノ下さんも邦生さんも、他の演者の方々も、「よくやった!」と、まずは一旦、褒めてくださる。そこから「こうやってみよう」と提示してくださるので、必要以上のストレスを感じることがありません。 須賀 古典が好きで、歌舞伎が好きで、それにもかかわらず、僕らがそれを現代化していくのを楽しんで見てくださるなんて、本当にすごいこと。それだけ愛が深いんだなと感じます。居てくださるだけで安心します。 坂口 邦生さんは、とても理路整然に演出されるので、大好きなんです。そのサポートをされるのが木ノ下先生。『勧進帳』では、終盤に弁慶がたらいでお酒を飲むシーンがありましたが、ヒューってこちらにやってきて、「もしかしたら、これは首を切ったときに入れる桶なのかもしれないねー。そういう意味もあるかもしれないですねー」と言って、ふわーっと帰っていく。「そうだったんだ!」と思ってお芝居をすると、すごく泣けてくる。自分がやろうとしていたことからあふれ出て、自分でやろうとしていなかったことが起こる。木ノ下先生は、そうした嬉しいハプニングを起こしてくださるんです。 田中 歌舞伎の入り口として最適。この作品を観たあとに歌舞伎に行くという流れは、とてもいいルートだと感じます。現代の我々が生きているこの世界の生きづらさ、苦しさを、三人の吉三も抱えている。絶対、誰かに感情移入して、その気持ちを追うことができると思うんです。5時間の中には、ユーモアたっぷりのシーンや音楽、ラップや音響など、いまの我々が楽しめる要素がたくさん入っているので、飽きずに観ていただけるはずですし、それを目指していますので、ぜひ、観にいらしてください。 須賀 5時間て、──また言っちゃいましたね(笑)。そうですね、人間って、悩んでいることは昔から変わっていないんだなと感じます。思った以上に理解できる感情がたくさんありますし、あの時代を生きていた人たちを見ることで、逆によく伝わってくる感情がある。人間のピュアな部分が感じられる瞬間、それが詰まった作品だなと思います。ぜひ、楽しんでいただきたいですね。 坂口 コロナ禍で一度中止になった公演ですし、物語に出てくる人たちも、「いましかないんだ!」と生きている。160年前もいまも、変わらず生きている人たちの作品なので、ぜひ、劇場で浸っていただきたいです! 取材・文:加藤智子 <公演情報> 東京芸術祭 2024 芸劇オータムセレクション 東京芸術劇場 Presents 木ノ下歌舞伎『三人吉三廓初買』 作:河竹黙阿弥 監修・補綴:木ノ下裕一 演出:杉原邦生[KUNIO] 【主な配役】 和尚吉三:田中俊介 お坊吉三:須賀健太 お嬢吉三:坂口涼太郎 丁子屋花魁 一重:藤野涼子 木屋手代 十三郎:小日向星一 伝吉娘 おとせ:深沢萌華 八百屋久兵衛:武谷公雄 丁子屋花魁 吉野:高山のえみ おしづ弟 与吉:山口航太 文蔵倅 鉄之助:武居卓 釜屋武兵衛:田中佑弥 丁子屋新造 花琴:緑川史絵 土左衛門伝吉:川平慈英 文里女房 おしづ:緒川たまき 木屋文蔵[文里]:眞島秀和 スウィング:佐藤俊彦 藤松祥子 【東京公演】 2024年9月15日(日)~9月29日(日) 会場:東京芸術劇場 プレイハウス 【長野(松本)公演】 2024年10月5日(土)・6日(日) 会場:まつもと市民芸術館 主ホール 【三重公演】 2024年10月13日(日) 会場:三重県文化会館 中ホール 【兵庫公演】 2024年10月19日(土)・20日(日) 会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール