迷惑メール、フィッシング詐欺…「実はこれが一番効果的」IT専門家が認める意外な解決方法
「送信者が短期間に大量の同じようなメールを送っているかなどメールアドレスを確認するほか、メールの中身を見て文章やリンク、添付ファイルなどをチェックしています」(藤田さん) 電子メールの中身を詳細にチェックするには、コンピューターの高い計算処理能力を要し、技術力や費用も必要になる。 電子メール内のリンク先については「ブラックリストがあります」(藤田さん)。メール本文の文章については、たとえばビットコインといった暗号資産への送金の指示などがあると犯罪を疑われることもある。チェックして、おかしいと判断すれば、迷惑メールなどに振り分けられる。 ◆迷惑メールと誤解されて…神奈川県公立高校のオンライン出願でのトラブル 一方、迷惑メールなどの事前チェックが厳しくなるほど、適切なものも排除され、別の問題も出てくる。 短期間に同じ内容のメールを大量に送ると宣伝・広告か、不審な攻撃者とみなされることがある。そうしたケースで、次のような困った問題が今年初めに発生している。 神奈川県公立高校では今年からオンライン出願となったが、早々から障害が発生した。事前登録の受付は1月4日に始まり、受験生が事前登録に米グーグルが提供するGメールを使うと、9日になって保護者から「案内メールが届かない」という問い合わせが相次いでいた。 県教育委員会教育局は1月19日にシステムの不具合が解消したと発表。原因は、Gメールのアドレスを連絡先に登録した志願者あてのメールが増加して、Gメール側で制限がかかったとみられるとした。 これに対して、Gメール側でなく、学校側に問題があるとの見方が出ている。 「学校側の送信メールサーバーの技術レベルが至らなかったため、Gメールが弾いてしまったのだろう。学校側がGメールのセキュリティレベルに追いついていなかったのではないか」(藤田さん) 短期間に大量の同じような電子メールを送信して迷惑メールと誤解されたとみられるが、送信者側、つまり学校側の問題という。 この問題については、Gメールの公式サイトの「コミュニティ」というコーナーに、「Gメールのシステム動向を観察している部外者による推定で、グーグルの公式な発表ではありません」としながらも、次のような指摘がある。「(学校側の)設定が正しくなかったことでグーグルのシステムが該当のメールサーバーから送信されるメールの着信を拒否したことが原因と推定される」としている。神奈川県教育委員会教育局による原因説明は、正しいとはいえないようだとも。 こうした事例のように、必要な電子メールが迷惑メールのように扱われて、受け取れなくなる不便も出ている。メールサービスの運営事業者がセキュリティレベルを引き上げ、迷惑メールを除去しようとすると、本当に必要なものと見分けることが、ますます難しくなる。 上野さんは 「セキュリティレベルが高くなると、誤検知によって、本来正しいメールなのに不審なメールとして扱われてしまう問題もあります」 と指摘する。さらに、 「海外の攻撃者も生成AI(人工知能)などを活用することで、澱みのない日本語を使ってきたりするので、自動的に不審なメールだけを取り除くことは容易でなく、いたちごっこが続いているのが現状です」 という。迷惑メールを受け取らないため、セキュリティレベルの高い事業者のメールソフトは選択肢の一つではある。 ただし、それだけで大丈夫ではない。どのようなメールを使っても、怪しいメールは開かない、自分のメルアドをむやみに公開しない、アンケートサイトなどでメルアドを記入する際は「捨てメール」のアドレスを使うなどで大事なメルアドの使用を避ける、といった防衛策は必要になる。 取材・文:浅井秀樹
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