マグロ資源の危機 経済合理性の追求では持続的資源活用は難しい
しかし、1983年から2016年ごろまでは、資源量は毎年約1万~8万トン程度の範囲内で推移しており、資源枯渇の危機的状況といわれてきた。10年にはワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約)の国際会議で、大西洋クロマグロの取引禁止案が提案され、否決されるという事態も起きている。 その後、RFMOや国内において、漁獲量の減少措置(漁獲制限)、未成魚漁獲量の減少措置、定置網漁業の免許数増加抑制、養殖漁場の新設制限などの対策が行われた結果、太平洋クロマグロの資源量は16年ごろから回復。21年にはWCPFCとIATTCの回復目標12.5万トン(親魚)を達成したと推計されている。 太平洋クロマグロの日本の漁獲枠は、今年7月のWCPFC会議で、現行の大型魚(30キログラム以上)年間5614トンが8421トンに、小型魚(30キログラム未満)は4007トンから4407トンに拡大することで合意しており、12月のWCPFC会議で正式に決まる見通しだ。 図は、22年の日本のマグロ類供給量だ。供給量は漁獲、国内養殖、輸入などを合わせたもので、日本市場に供給されたマグロ類の量となる。総量は21年の34万トンから約3万トン減少し、31.2万トンとなった。総量は11年から20年まで毎年35.6万~39万トンの範囲で推移。魚種の比率はここ10年大きく変わっていない。表2は、図の供給量を国別に表したもので、輸入が17万トンと全体の半分以上を占める。台湾(5.8万トン)、中国(2.5万トン)、韓国(1.7万トン)などからの輸入量が多い。 水産庁の資料によると、21年の世界のマグロ類漁獲量は約215.2万トンなので、前述の日本のマグロ類供給量31.2万トンの水準はそれほど高くないように見えるが、クロマグロに限定すると、21年の世界のクロマグロ漁獲量4.9万トンに対し、日本の漁獲量は1.3万トンと、日本だけで4分の1近くを取っている。