マグロ資源の危機 経済合理性の追求では持続的資源活用は難しい
ヘルシーでおいしい「海の幸」が危うい。安さを追求する消費者や流通業者、小売り、飲食店が漁師を乱獲に駆り立て、安値で買いたたかれる漁業関係者を疲弊させる悪循環を断ち切る時だ。1皿=100円のマグロずしは持続可能ではない。 ◇過剰漁獲による資源減少を懸念 カツオ・マグロ類(クロマグロ、ミナミマグロ、メバチ、キハダ、ビンナガ、カツオ)は、過剰漁獲による資源減少が懸念されている。その対策として、全世界の海洋に五つの「地域漁業管理機関(RFMO)」(表1、日本は全てに参加)が設置され、漁獲枠の設定をはじめ、さまざまな資源管理措置を実施している。水産庁によると、2021年の世界のカツオ・マグロ類の漁獲量は495.9万トン(うちカツオ278.9万トン)で、日本の漁獲量は23万トン(うちカツオ11.3万トン)。海域別では西太平洋が241.2万トンと全体の約半分を占めている。 ◇枯渇の危機的状況 現在のマグロ資源状況を確認しよう。表1はRFMOごとの魚種別資源評価の一覧表だ。マグロ類の資源量推計は、主に調査漁獲で捕獲した産卵親魚量を把握することから始まる。そこから産卵親魚量全体を推計し、この産卵親魚量自体を資源量としているケースが多い(水産庁資料)。これに対して、漁獲による資源量の減少率を表す漁業係数がある。各RFMOでは、資源の適正管理を目指して、資源量と漁獲係数の基準値を定めており、表1のプラスやマイナスは、その基準値との比較を表す。 表1では、メバチ、キハダ、カツオなどは主にインド洋で過剰漁獲・資源減少と評価。ミナミマグロも南半球で資源減少の状況で、高級マグロとされるクロマグロは、東部・中西部太平洋で資源減少と評価されている。 実際のマグロの資源数量に関しては、水産庁や水産研究・教育機構などが推計値として公表している。それらによると、国別では日本が最も漁獲量の多い太平洋クロマグロは、資源量(親魚)として22年時点で約14.4万トンと推計されている。