ANAの空港接客コンテスト、能登の加波さん優勝 普段通りで「緊張なし」
全日本空輸(ANA/NH)は12月11日、空港のカウンターでチェックイン業務などを行う地上係員(グランドスタッフ)の接客技術を評価する「空港カスタマーサービス スキルコンテスト」を、羽田空港第3ターミナル近くの複合施設「HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ、HICity)」にあるホール「コングレスクエア羽田」で開催した。17回目の今回は、能登空港の加波(かば)千晴さんがグランプリを獲得した。また初の試みとして、ファイナリストの家族も会場に招いた。 【写真】本選に出場した15人 ◆7000人の中から15人出場 今回のテーマは、「FUN leads to FANs」。社員がやりがいを持つ姿(FUN)こそ利用客に感動を与え、ANAファン(FANs)を作ることにつながり、ANA社員自身が接遇に魅力を感じることが期待を超えるサービスを生み出すことから、テーマを決定した。今回は国内と海外計94空港の約7000人の地上係員の中から、66空港66人による予選を勝ち抜いた国内線10人と国際線5人の計15人が本選に出場。国際線は関西空港のほか、4人が海外空港から参加した。 本番では、1人あたり5分程度の持ち時間で実力を披露した。旅客視点やiPadを活用した情報提供、次回の搭乗につながる案内などで審査し、利用客のニーズに合っているかやイレギュラー時の対応力などを見極めた。 審査員はANA社内外の6人が務め、ANA社内からは井上慎一社長とオペレーション部門統括の米谷宏行取締役執行役員、客室センター長の塩見敦与取締役執行役員、オペレーションサポートセンター長の小山田亜希子上席執行役員、CX推進室長の大前圭司執行役員の5人が審査。社外からは、ANAをよく利用するという私立品川女子学院の漆紫穂子理事長を招いた。 ◆毎月利用の常連客への対応力 コンテストでは、さまざまな乗客役を社員が演じた。受託手荷物の紛失や天候による便の振り替え、ヘアアイロンの持ち込み可否など、出場した15人には、すべて異なる“トラップ”を用意した。 グランプリとなった加波さんは、毎月利用する顔見知りの常連客への対応力を審査。株主優待券の登録を尋ねられた加波さんは、手持ちのiPadを使って登録方法を示した。また、12月25日から1日2往復に戻る羽田-能登線の運航スケジュールも案内。加波さんは常連客に「お忙しいですね」などと声をかけるなど、“距離の近い”応対力をみせた。 コンテストでは利用客への対応力のほか、乗客役の社員が各空港の土産物や観光地など、地上係員がおすすめする地元のものを尋ねるケースが多い。加波さんはおすすめの土産を聞かれ、北陸で知名度の高い揚げあられ「ビーバー」を挙げ、iPadで画像を示しながら説明した。ビーバーは数種類の味があり、加波さんは「白エビ」がおすすめだという。 ◆井上社長「デジタル化進んでも温かいおもてなし」 今回のスキルコンテストは対面開催で、オンラインでも配信した。井上社長は「デジタル化が進んでも、人からしか感じられない温かいおもてなしがあると確信した」と満足した様子で振り返り、出場者の接遇する姿は旅客に感動を与え、ANAのファン獲得にもつながると述べた。ファイナリスト15人には「接遇を磨き、世界一を目指そう」と語りかけ、さらなる向上を求めた。 グランプリを獲得した加波さんによると、能登空港は小さい空港で、顔見知りの利用客が多いという。「ほかの出場者よりもだいぶ年上で気が引けた」(加波さん)ものの、「いつも通りの接客ができ、まったく緊張しなかったのが勝因」と振り返った。 加波さんが働く能登地方は、元旦に地震、9月に大雨の被害に見舞われるなど、今年は災害が頻発した年となった。加波さんは空港を含めた地域全体に「いい結果で能登に明るい話題を届けられた」と笑顔を見せた。 準グランプリはマニラ空港のMaricris Medina(マリクリス メディナ)さんが、審査委員特別賞は松山空港の北川美羽さんと、庄内空港の山口藍花さんの2人がそれぞれ受賞した。
Yusuke KOHASE