石破内閣は思ったよりもしぶといかもしれない
政権発足からここまでの石破さんは、かなり心もとない感じであった。前言撤回が相次ぎ、「石破さんらしさ」がなくなった、との声も多かった。何より9月27日、総裁選の最中に勝者が「高市(早苗)さんじゃない!」とわかった瞬間に日経平均株価の先物は大幅に下落、30日は現物も2000円近くも下がってしまった。このニュースは「石破ショック」として世界を駆け巡った。 しかし筆者がそれ以上のショックを受けたのは、石破さんがアメリカの有力シンクタンクであるハドソン研究所に寄稿した”Shigeru Ishiba on Japan’s New Security Era: The Future of Japan’s Foreign Policy” (石破茂「日本の外交政策の将来」)という論文である。例の「アジア版NATO」の話が出ているのだが、安全保障論のイロハというべき「集団的自衛権」と「集団安全保障」の定義が混乱している。それ以上に、「アメリカが信用できないから……」という議論を、アメリカのシンクタンクのサイトに載せてしまうのはセンスがなさすぎよう。
面白いことにこの論文、当初は掲載日が「9月27日」となっていた。しかし今見ると「9月25日」となっている。9月27日だと石破さんはすでに自民党総裁になっていて、イコール「次の日本国首相」のご意見ということになってしまう。それじゃあマズイということで、あとから書き換えられたらしい。大丈夫か、こんなことで。 真面目な話、得意分野であるはずの安全保障でこんなボロが出るようでは、ほかの経済政策などは一体どうなってしまうのか。石破さんは若い頃から、防衛庁長官、農林水産大臣、自民党幹事長などの要職を歴任してきた。ところがここ10年ほどは、党内で「冷や飯組」の悲哀をかこつこととなり、知識のアップデートがされていないようなのだ。これでは首相就任後に、発言修正を迫られるのも無理はない。