【大学トレンド】日本文学科は「就職に直結しない」? 「夢はお笑い芸人と芥川賞作家」、学生が語る学ぶ目的
好きなことで成績トップに
森貞さんは現代文学、保理江さんは近代の作家とその背景をテーマに研究してきました。 森貞さんは23年度に文学部を首席で卒業し、保理江さんは早期卒業しました。早期卒業とは、必要な単位を取得し、成績が優秀であれば3年間で学部を卒業できる制度です。高校時代の受験勉強が好きではなかったという2人が、大学では優秀な成績を収められたのはなぜでしょうか。「関心があることに取り組んでいたら、自然と成績がついてきた」と2人は口をそろえます。 「大学4年間は、一度失った学習意欲を取り戻せた時間でした。自分で考える、新しいことを知るという環境で学べて、それを踏まえて創作できたことが大きかったです。本当は『源氏物語』などの古典は苦手なのですが、現代の作品とも確実につながっているので、そう考えると苦手な分野でもやる気が出てきました」(森貞さん)
目指すはお笑い芸人
2人は研究を続けるために大学院へ進学。森貞さんはすでに次の目標に向かって歩き出しています。 「お笑い芸人になります。そのために、芸能事務所の養成所に入りました。大学院では、文学と笑いについて真剣に考えるようになりました。大学で学んだ『言葉』を武器にお笑いライブに出たり、キングオブコント(日本一のコント師を決める大会)に出場したりすることを目標にしています。そして10年後には芥川賞をとりたいです」 保理江さんは将来の道を決めかねているようです。 「研究を続けるのか、就職活動をするのか、創作に打ち込むのか、それ以外の道を選ぶのか。まだよくわからないという状態をもう少し楽しみたいと思っています。僕はこれまでずっと本やアニメ、映画や絵画など芸術作品と向き合う時間が一番楽しかったので、これから先もそこに人生の価値を置いていきたいです」 土屋忍・文学部長は、「就活を始めるタイミング、就職をする時期、みんなが同じレールに乗って同じように進まなくていい。就職先に対する安心・安全の指標が崩壊しつつある今、言葉を身につけ自分を持っている学生にはチャンスです」と話します。 「日本文学文化学科は、言葉と格闘して、言葉を形にしてコミュニケーションをとることを楽しむ学科です。文学が好きであれば、好きなことだけを学ぶのですから、成績は勝手についてきます。就活にしても、自分で目標を決めてやるべきことをやれば結果がついてくるようです。例年1割程度の学生が教職課程を履修しますが、今春の卒業生は25人の受験者全員が中学校や高等学校の国語教員としての道を歩み出しました」 また土屋学部長は日本文学科などの変化について、次のように話します。 「かつての国文科、日本文学科で学べたのは『国文学』という狭い世界で、教員が教えたいことを教えていたので、学生はつまらなく感じることもあったと思います。しかし今は、各分野の教員さえ揃っていれば、多様な学びが可能です。多様な選択肢の中から学生自らが学びたいことを選び、掘り下げていけます。楽しいと感じれば、学生たちはいきいきと学びます」
朝日新聞Thinkキャンパス