ロシア13歳天才少女トゥルソワの4回転技術は羽生結弦にソックリだった!
女子はジュニアだけでなくシニアでもショートプログラムに4回転ジャンプを組み入れることが規定で認められていない。だが、トゥルソワはフリーで基礎点が10.5点のサルコーと10.3点のトゥループをプログラムに組み込んだことで、技術点の合計が92.35点になった。これは、平昌五輪のフリーでザギトワがマークした技術点81.62点を10点以上も上回るもの。しかも、ジュニアはシニアに比べてコレオシークエンスがひとつ少ないルールなのだ。シニアならば、さらに得点がアップしていたことになる。 こうなると、もう他の選手は誰も歯が立たなくなる。 しかも、競技後、トゥルソワは、「優勝できたことに加えて、2つの4回転ジャンプが成功できてうれしい。今後? 他の4回転も習得したいし、もし可能ならば全部やりたい」とまでコメントした。 女子の4回転時代の到来をトゥルソワが打ち鳴らしたことになる。 「トゥルソワ選手が4回転時代のドアを開けました。彼女に勝つためには、高い技術点がないと対抗はできません。今後、世界の頂点を目標とするならば4回転、トリプルアクセルが必須になってくるでしょう」と中庭氏。さらにロシアには、年齢的にジュニアGPシリーズに出場できなかったが、先のロシア・カップでトゥルソワを抑えて優勝したアンナ・シャルバコワという13歳の4回転の使い手が秘密兵器として控えている。金メダリストのザギトワ、銀メダリストのメドベージェワの牙城に迫る次の世代が続々と腕ぶしている。 しかし、羽生の例を見るまでもなく4回転時代には怪我というリスクもつきまとう。早熟型のロシアでは、選手生命が極端に短いという傾向もある。ソチ五輪の団体戦の金メダリストで“キャンドルスピン”で名を馳せたユリア・リプニツカヤは、摂食障害などで潰れた。4年後の北京五輪の金メダル候補としてトゥルソワの名前をすっと挙げることができない理由もそこにある。 「ソチ五輪のリプニツカヤの例を見るまでもなく、10代半ばから後半にかけてのロシアの選手は強いのです。しかしながら、選手寿命が短命に終わる傾向にもあります。理由は、様々あると思いますが、体の軽い若年期に技術を会得したものの、年齢と共に身体が変化し、持っているイメージと技術がずれやすく、それを成長に合わせて調整したり、成長期特有の故障や気持ちの変化、それによるモチベーションの維持などの難しい問題があると言えます。トゥルソワは、年齢的には4年後の北京五輪で17歳ですが、今後、それらの身体と精神のコントロールの問題などで伸び悩む可能性も否定できません。北京で彼女が金メダル候補か? と聞かれれば、名前を挙げたいのですが、まだそれを断言できない状況にもあります」 中庭氏の見立ては厳しいが、世界一選手層の厚いロシアが先陣を切る形で、女子も4回転時代に突入したことは間違いないだろう。 今回、フリーでのトリプルアクセルに失敗、8位に終わった紀平梨花(関大ク)も練習では4回転サルコーに挑戦している。3位に入った山下真瑚(グランプリ東海ク)も、滞空時間の長いジャンプと力強く伸びやかなスケーティングが持ち味。日本勢がロシアに対抗するためには、4回転ジャンプの会得が切り札になってくるのかもしれない。