トランプ再登板で「日本人の生活」はどう変わるのか…第2次トランプ政権にとって主要な武器の中身
実際、インフレの収束を公約に掲げているトランプ氏にとっては、そう簡単に関税を上げるわけにもいかない。関税が大幅にアップされれば、輸入品は高くなるため、インフレ→金利上昇→ドル高に振れることになり、その効果は薄らぐことになるはずだ。 そもそもトランプ2は、前回と異なり比較的景気の良好な状態で政権を引き継ぐ形になる。この4年間の民主党政権では、確かにロシアによるウクライナ侵攻やコロナ禍の影響からインフレになったものの、株式市場は連日史上最高値を更新し続けており、高い成長率や低い失業率を維持してきた。
好景気の状態を引き継いで2年程度は好景気を保つことができるかもしれないが、関税を大幅に引き上げることでインフレを招き、金利高になって景気が急速に失速する可能性もある。 ■「減税」「規制緩和」ともにインフレ要因? 一方、トランプ2の経済政策では「減税」を大きく打ち出していることも忘れられない。1期目の2017年に決めた大型減税は、その一部が2025年末で失効するが、この延長を最優先課題に挙げている。さらに、今回の選挙では法人税率を現状の21%から15%にまで引き下げると公約している。これら減税のコストは10年間で約5兆ドル(約770兆円)と言われており、大型減税は景気を押し上げる可能性が高いが、財政悪化も招く。
さらに、トランプ氏は常々金利をもっと下げるべきだと主張している。中央銀行であるFRBのパウエル議長は、現在は低金利に動いているものの、インフレになればまた金利を上げていくことになる。将来的には、両者の確執が目立つことになりそうだ。どちらにしても、関税、減税、低金利が揃えばインフレが再び猛威を振るう可能性もある。 アメリカ国民の多くは、インフレに嫌気がさして、トランプ氏を選択したのだが、その政策はインフレを誘導する皮肉な結果になりかねない。ちなみに、トランプ氏が強く主張している「移民制限」も、労働力不足を招き賃金上昇が予想されている。インフレ撃退を主張しつつ、その政策はすべてインフレに結びつくものと言っていい。