世界2階級王者に向けてまもなくゴング! 「チーム拳四朗」がスタイルチェンジより大切にする事
階級を上げた事で過酷な減量から多少開放されるようになる反面、リーチや体力差といった利点は少なくなる。フライ級転向の成功の鍵について、ふたりはどう考えているのか。まずは拳四朗。 「最近は『攻め続けられる限り攻め続ける』みたいな気持ちでいましたが、いまはまずいと思えば、バックステップを多用したり、横の動きを増やしたり、ディフェンスに考えを切り替えて対応することを意識しています。被弾しても打ち返して押し切る試合が多かったと思いますが、これからは危ない場面は減る気はします」 現時点でプロボクサー人生で唯一の敗戦となった2021年9月22日、矢吹正道との試合以降、拳四朗はまさに「肉を切らせて骨を断つ」という言葉で表現されるような激しい撃ち合いを繰り広げて来た。ファンも互いの魂がぶつかり合うような試合を期待し、それまで脚力を駆使して動き回り、左ジャブを突きつつ、打って、離れて、を繰り返す戦い方だった拳四朗の評価を一変させた。しかし加藤は「どちらも拳四朗の本来の持ち味とは違う」と話した。 「拳四朗の持ち味は、脚を駆使して動き回るアウトボクシングというイメージが定着していましたが、最初からそうだったわけでもなくて、『そういうスタイルに傾倒していた時期もあった』というのが実際の所です。拳四朗の最大の武器は圧倒的なフィジカル、持久力。圧倒的な体力があるからこそ、並のボクサーがどっしり腰を据えて地に足を付けた状態でするような上半身の動きや攻撃を、あれだけ飛び跳ねて動き回りながらでも出来る。 もうひとつの特徴は、再現性の高さです。体の使い方が抜群に上手い。こちらが『こうやって動くんだよ』と指示すればすぐ出来るようになるので、脚も使えるし、短期間でファイターにもモデルチェンジ出来たように思います」 拳四朗は体力と再現性に優れた万能型ボクサー。一方で器用であるがために迷いが生じたり、まわりに影響されやすい一面もあるという。加藤は「今後の課題は、1ラウンド3分間という時間の使い方を、自分自身で考えること」と話した。 「スタイルも大切ですが、考え方も変えていかなければならない。フライ級に転向しても、練習ですること自体はそこまで大きくは変わりません。取材でもよく、フライ級に転向したのちのスタイルについて質問されますが、細かな変更点がたくさんあって、それが大きな成果につながるので『スタイルをこう変えます』とはなかなか説明しにくい。 もちろん、いまの良い所はさらに伸ばして、悪い所を改善するような練習をしています。いま自分が一番気になっているのは、相手の耐久力が上がる事。『被弾してもこのまま押し切ってしまえ』みたいなスタイルを続ければ、いずれ耐えきれないような反撃も食らう試合も出て来ます。 自分の力を過信せず、このまま押し切れると考えて力を出しきる。攻めきるだけではなく、反撃も想定してペース配分を考える事。体力や技術をコントロールするのは心。やはりボクシングに対しての考え方がどうであるか、という事のほうが重要です」 * * *