「今は基準はない」検察庁法案、武田大臣答弁めぐり審議紛糾
衆院内閣委員会は13日、検察官の定年延長を可能にする検察庁法改正案などに関する質疑を行った。野党側の議員が質問に立ったが、武田良太・国家公務員制度担当相の答弁はかみ合わない場面も多く、野党側は反発し、退席。委員会は休憩に入ったがそのまま散会した。 【動画】検察庁法案めぐる大臣答弁に野党反発 衆院内閣委、休憩のまま散会(2020年5月13日)
法務相が不在の中、進んだ審議
「なぜ私は武田大臣に質問しているか、不思議でしょうがない」 この日の一番手で質問に立った野党統一会派の今井雅人氏(無所属)は、本来、検察庁法案を所管すべき法務省の森雅子法務相が出席していないことを皮肉った。 今回の検察庁法改正案は、国家公務員法改正案などと一括で審議される「束ね法案」として扱われている。そのため、委員会も法務委員会ではなく内閣委員会で審議されている。「法務大臣に聞くのが筋だと思うが、ここに来ていただけない」。野党側は森法務相の出席を求めたが、質疑は武田担当相に対して行われた。ただ武田氏は「本来は法務省がお答えすべきだが……」と繰り返すなど、答弁が噛み合わない場面も目立ち、たびたび速記が止められた。 今井氏は「束ね法案」についても問題視。公務員の定年引き上げ自体には「大賛成」だと述べた上で、「その中にどさくさに紛れて、検察庁法の改正が入っているから問題だと言っている」と語気を強めた。
「内閣が定める事由」で役職定年延長も
検察庁法改正案の主な内容は、▽検察官の定年を63歳から65歳に引き上げ、▽検事総長の定年はそのまま65歳、▽役職定年を設け、最高検次長検事、高検検事長、地検検事正らは63歳になったら役職を退く、▽特例規定として、検事総長、次長検事、検事長は「内閣が定める事由」のある場合は最大3年間、役職定年を延長できる――というもの。 野党側は、昨年秋にまとめられた法務省の原案段階でも検察官の定年引き上げは検討されていたが、「定年延長」の記述は入っていなかったと指摘。それが今年1月になって突然、定年延長の条文が入り、1月31日には黒川弘務・東京高検検事長の定年延長が閣議決定されたとした。この黒川氏の定年延長は現行法の解釈変更によってなされたものだが、付け加えられた改正案の特例規定は「黒川氏のケースを後付けで認めるものではないか」と追及。さらに、この特例規定による定年延長は、内閣による人事介入につながりかねないと警鐘を鳴らした。 武田担当相は「黒川さんのための法改正ではない」と否定したが、野党統一会派の後藤祐一氏(国民民主党)は、これまでは定年ですっぱりやめることで「内閣の介入を防いできた。それが検察のあり方だったのではないか」とただした。 さらに、この特例規定が政府によって「濫用」されることへの懸念を示し、定年を延長させる具体的な基準について質問した。 武田担当相は「人事院規則、国会議論を踏まえて、法務省において検討する」としたが、さらに後藤氏から追及されると「(基準は)今はない」と明かした。これに野党側は反発。同相は「施行日までにはしっかり明らかにしたい」と理解を求めたが、審議は紛糾。野党側は「答弁が不十分」だとして退席し、松本文明委員長が「暫時休憩」を告げ、委員会はそのまま散会した。