<ラグビー>帝京大が社会人のNECを倒した大金星は、なぜ起きたか?
敗れたNECのプロップ瀧澤直主将の言葉が全てだった。 「NECが負けた。帝京大さんが勝った。そういう試合だったと思います。フィジカル面では我々がやられてしまった部分もある。偉そうですが、トップリーグと同等と言わざるを得ないと思います」 2015年2月8日、東京・秩父宮ラグビー場での日本選手権1回戦。大学選手権6連覇を達成した帝京大が、日本最高峰であるトップリーグのNECを31―25で下した。 学生のトップリーグ勢撃破は2005年度の早大以来9季ぶりの快挙。春先から目標としてきた試合を制しただけに、勝った当事者たちも感激した様子だった。しかし実相は、いわゆる「下克上」には映らなかった。鍛えられたチームがただただ強みを発揮し、相手のキーマンを封じ、計画通りに接戦を制したのだった。 前年度から「打倒トップリーグ」を本格的に目指してきた帝京大は、接点で抗う体力と技術、妥当なプレーを選ぶ判断力、終盤まで走りきるスタミナという個人能力を高めつつ、複層的な攻撃陣形や幅広な守備ラインもインストール。学生相手には大差のゲームを繰り返してきた。 1月25日には、一昨季までトップリーグを2連覇していたサントリーを練習試合で下していた。フィジカル勝負で互角だった。場所は先方の本拠地である東京都府中市のグラウンドで、相手のメンバーは控え主体とはいえ外国人選手も並んでいた。 前年度の日本選手権では、トヨタ自動車に13―38で屈している(2014年2月16日/秩父宮)。「後手を踏んだのはセットプレー、特にスクラム」。岩出雅之監督はこう反省した。プレーの起点で、「(相手の)様子を伺うところ」を悔やんでいた。だから今季は、例年以上にスクラム練習の分量や質にもこだわった。元日本代表プロップの相馬朋和コーチのもと、8人一体のメカニズムを落とし込んできた。 学生王者は、現代ラグビーの王道ともいえる強化方針を貫いてきた。充実していた。