現役小学校教員にとっての「中学受験」。今と昔、直前期の登校について
受験する月は学校を休むのがいいか?
3.受験する月は学校を休むのがいいか? 中学受験日は、1月中旬ごろから始まります。 3学期が始まって、普段通りに小学校に来ながら中学受験に臨む子どもと、中学受験が終わるまで学校を休む子どもに分かれます。 若手教員だった頃は、小学校はちゃんと来てよ、休んだ分の勉強はどうするの?と思っていました。でも、今はそういう思いは全くなくなりました。 中学受験は、子ども本人の人生にとって大きな分岐点の一つになるからです。中学受験に臨む子ども本人や保護者の気持ちが分かるようになってきたからです。中学受験のために小学校を休むのは、単に受験勉強をするためではありません。冬場は、インフルエンザなどの風邪が特に流行します。小学校の教室にはたくさんの子どもたちがいるので、風邪がうつってしまうリスクが高くなります。受験直前の大切な時期に、風邪になってしまったら悲しすぎます。 小学校を休んだ分の授業内容も、事前に伝えておけばそれほど問題になりません。中学受験をする子どもは、3学期の学習内容を2学期には塾等で勉強し終わっているからです。 中学受験の実態や、子どもや保護者の大変さが知るうえでとても役立ったのが、『二月の勝者-絶対合格の教室-』(作:高瀬志帆/出版:ビッグコミックス)という漫画です。小学校教員としても親としても勉強になりました。 若手教員だった頃は、1人で地元以外の中学校に進学する子どもを、1人でまわりに友達もいない中で大丈夫かな、楽しい中学校生活を過ごせるかなといろいろ心配に思っていました。でも、最近の小学生は、友達関係が広くなっています。塾などの習い事に通う子どもの割合も年々、高くなっているように感じます、低年齢化しています。スマホやゲーム機を持つ子どもの割合や低年齢化も年々、高くなっています。塾などの習い事やSNSを通じて、自分の小学校以外につながりがある子どもが増えています。地元以外の中学校に進学しても、知っている人が1人もいないということがなくなってきています。 「中学校まではみんな一緒に地元の中学校に進学する」という意識は、もう時代遅れなのかもしれません。今は、小学生にも進学先の選択肢が増えています。子どもの多様性を認めるのと同様に、進学先の多様化もどんどん進んでいく時代になっているのだと思います。より新しい環境、人間関係で中学校生活をスタートしたい子どもにとっては、ありがたいことだとも思います。 松下隼司◎大阪府大阪市立豊崎小学校教諭。奈良教育大学卒業後、2003年度より現職。受賞歴に、第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、大神神社第17回短歌祭最優秀賞(額田王賞)、プレゼンテーションアワード2020優秀賞、第69回読売教育賞優秀賞、第20回読み聞かせコンクール朗読部門県議会議長賞、自由部門茨城県教育委員会教育長賞、令和4年度 文部科学大臣優秀教職員「社会に開かれた教育実践奨励賞」表彰がある。著書に『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版刊)、『せんせいって』(みらいパブリッシング刊)むずかしい学級の空気をかえる楽級経営(東洋館出版社刊)、教師のしくじり大全 これまでの失敗とその改善策(フォーラムA企画刊)など。
Forbes JAPAN 編集部