現役小学校教員にとっての「中学受験」。今と昔、直前期の登校について
進学先の多様化もどんどん進んでいく時代に
「中学校まではみんな一緒に地元の中学校に進学する」という意識は、もう時代遅れなのかもしれません。今は、小学生にも進学先の選択肢が増えています。子どもの多様性を認めるのと同様に、進学先の多様化もどんどん進んでいく時代になっているのだと思います。より新しい環境、人間関係で中学校生活をスタートしたい子どもにとっては、ありがたいことだとも思います。 2.小学校教員(担任)には「内申書を書く手続き」の仕事がなくなった 今から20年ほど前は、小学6年生を担任したら、5月中頃までには自分の受け持つ学級の誰が受験するかは把握していました。それは、4月の学習参観後の学級懇談会が終わってから、個別に保護者から、 「先生、うちの子、中学受験をする予定なんです」 と教えてもらえたからです。また、前述した家庭訪問の際にも、中学受験のことを保護者から知らせてもらえました。筆者も、 「担任としてできることがありましたら、何なりとおっしゃってください。〇〇さんのためにできる限りのことをさせていただきたいです」 と答えていました。そして、2学期末ごろになると、受験する子どものために必要な内申書を、手を震わせながら書いていました。 でも、いつからか内申書を書く手続きがなくなりました。通っている小学校を介さないで、保護者が受験に必要な手続きをできるようになったのです。管理職・学級担任として必要な仕事は、合格・進学する中学校に年度末、書類を送ったり校務パソコンに進学先の学校名を打ち込んだりするぐらいになりました。仕事上の負担が減り、正直、ありがたくも思いました。 一方で、不安や心配事も増えていっています。それは、担任する子どもの受験を知らないことが増えているのです。前述のとおり、筆者が教員になった頃は、子どもが受験する場合、保護者から100%教えてもらっていました。しかし受験に際して、学校の手続きが必要なくなっていったのに合わせて、保護者から子どもが中学受験することを教えてもらえないことが増えてきました。保護者からでなく、子どもから、 「先生~、ぼく、中学受験します。」 と教えてもらうことも増えてきました。さらに、 「先生~、〇〇さん、中学受験するねんて~」 と、本人や保護者からでなく、受験をする子どもの友達から教えてもらうことも増えてきました。社会のつながり、地域のつながり、ご近所づきあい、学校と保護者のつながり、先生と子どもとのつながり、さまざまな”つながり”が昔に比べて、希薄になってきていることは感じていますが、それでも、中学受験をすることをその子どもの友達から教えてもらったときは、とても驚いてしまいます。 筆者も、子ども本人や保護者から受験することを聞いていないので、 「がんばってね」「宿題、無理しないでいいからね」「明日、受験、がんばってね」 などと、大っぴらに励ましたりフォローしたりできません。 そこで、中学受験をする子ども本人に筆者の方から 「中学受験するの?」 と恐る恐る確認します。すると、 「はい」 と、あっけらかんと答えてくれるのです。そして、念のために保護者にも電話をして確認するようにします。 数年前、担任する子どもが中学受験を一切知らず、中学受験が終わり、合格してから、 「先生、中学受験して合格しました」 と、子どもや保護者から教えてもらうことがありました。とてもとても驚きました。なぜ事前に中学受験をすることを教えてくれなかったのかを聞くと、みんなや先生に知られると恥ずかしいからと話してくれました。 そこで、保護者懇談会や家庭訪問の際に、 「もし中学受験をお考えになられていましたら、教えてください。」 と、こちらからお願いをするようにしています(それでも、保護者や子ども本人から教えてもらうよりも先に、まわりの子どもたちから教えてもらうこともあるのですが…)。