和倉の料理人、弁当店で再起 七尾・古府町で帽子山さん 人と地域の「かけ橋」に
能登半島地震で職を失った七尾市和倉温泉の料理人男性が年内に、同市古府町の借家を改装して弁当店を開業する。働いていた旅館の再開にめどが立たない中、ピアノ教室を営む妻と一念発起し、能登の食材をふんだんに取り入れた自慢の味で再起を図る。「能登のかけ橋弁当」と命名して「人と地域をつなぐ弁当にしたい」と夢を膨らませている。 弁当店「ハッピーブリッジ」を構えるのは帽子山大助さん(45)、佳代さん(41)夫妻=七尾市光陽台。七尾城山の棚田で有機栽培されたコシヒカリ「清(きよ)水観音(みずかんのん)久三郎米(きゅうざぶろうまい)」をはじめ、能登牛や能登豚、七尾湾の魚介類、新鮮な地元産野菜を使った3種類の弁当を提供する。 珠洲市出身の大助さんは鵬学園高を卒業後、金沢や東京の旅館、日本料理店で技を磨き、28歳の時から和倉の大型旅館で腕を振るってきた。 元日の地震発生時は宿泊客の夕食の準備中だった。天井が崩れて防火扉が閉まり、宿泊客を避難させながら命からがら屋外に逃げた。旅館は外壁に大きな傷が残り、今も再建にめどが立っていない。大助さんは失業し、市内のスーパーなどでアルバイトをしながら家族を養ってきた。 再起へ背中を押してくれたのは、佳代さんの「おいしいお弁当を作ろう」という言葉だった。知人が経営する矢田町のカフェで弁当を作り、4月から復旧工事関係者らに試験的に配達してきた。 佳代さんがピアノ教室を構える借家のオーナーに相談し、11月上旬から倉庫に調理場を構える工事が進められている。夫妻は「復興は道半ばで日常も取り戻せていないが、豊かな能登の里山里海の幸を味わえる弁当として定着させたい」と語った。