「液化水素エンジン車」航続距離延伸へ…トヨタが開発に挑む、超電導を活用した新技術とは?
トヨタ自動車は液体水素エンジン車の航続距離を延ばす新技術の開発に乗り出した。超電導技術を導入し、「ボイルオフガス」と呼ばれる液体水素タンク内で気化した水素の半減を目指す。また同ガスをエンジンに再供給し燃料として活用するほか、小型燃料電池(FC)スタックで電力に変換する新技術も探る。共同開発する仲間を募り、早ければ2025年度内にも耐久レースで走行する車両に搭載する計画だ。 【写真】トヨタの小型FCスタック 液体水素エンジン車ではマイナス253度Cの液体水素を「魔法瓶」のような構造のタンクに貯蔵する。ただ、外気温の影響を徐々に受け水素が一部気化する。このボイルオフガスを従来は大気中に放出していたが、液体水素エンジン車の進化においては同ガスもエネルギーとして高効率に利用することを目指す。 まずは超電導技術を活用しボイルオフガス自体を低減する。これまではタンク上部にモーターとポンプが一体となったユニットを搭載していたが、接続部が外気と接するため大きな入熱源となっていた。最新技術では電気抵抗がゼロの超電導技術を駆使したモーターを開発しタンクに内蔵。入熱源を最少化し同ガスの発生を半分程度に抑制する。既に早稲田大学や京都大学、東京大学との産学提携で開発を始めている。 それでも発生してしまうボイルオフガスは、エンジン内で水素を噴射する部品「インジェクター」などで活用する。増圧器で圧力を2―4倍に高め、再度燃料として使用できる状態に戻す。さらに増圧器から排出されるボイルオフガスを小型FCスタックに供給し、電気エネルギーを取り出す。この電気でモーターを動かし、排気する水素を減らす。 トヨタではこれらの機能部品を試作したものの、現時点で「技術は不十分」(同社)と認識する。実際に部品として車に搭載するためには、さらなる小型化・軽量化も必須だ。「仲間づくり」と称して、共に技術開発に挑む協力企業を求めていく。