毒親から逃げるため自衛隊入隊も、体育会社会にめげて早々除隊…正社員なのに「手取り月14万円」家賃滞納でアパート退去。21歳・東京路上生活【FPが解説】
恐怖の転職先
Aさんは除隊したものの母親のもとには帰りたくないと、家と仕事探しをはじめます。高校の同級生で上京したという友人がいたため、ネットで都内の求人を探したところ、建設会社に就職することができました。心配だった住まいも、友人の助けもあって都内にしては家賃の安いアパートに辿りつくことができました。 正社員として働くことができホッとするものの、給与は一般より少なめで月17万円(手取り月14万円)です。それでもAさんは、蓄えがないこと、すぐに仕事に就きたかったという理由から即決。早速、翌日から勤務させてもらうことに。 Aさんは、1日7時間を週5日働いていました。あとでわかったことですが、2024年9月までの東京都の最低賃金は1,113円、10月からは1,163円です。9月まではぎりぎり最低賃金を上回っていましたが、10月以降も給与は変わらず、手当もありません。1週間のうちに40時間を超えて働いていても残業手当はついていません。さらに1日7時間勤務ですが、毎日のように10時間は仕事をしています。しかし、給与はほとんど変わりません。 2023年度総務省統計局の家計調査では、単身世帯の1世帯あたり1ヵ月の収入と支出では、消費支出が16万7,620 円、収入は月35万7,000円(勤労世帯「単身世帯」より)です。それに比べAさんは、手取り14万円から家賃、水道光熱費、食費などであっという間になくなってしまいます。 会社の同僚から、この会社は残業代も払ってくれないブラック企業らしいと聞き、ネットで調べてみると、自分は非常に安い賃金で働いていたことがわかります。ですが、上司にそんなことを話すと辞めさせられるのではと言い出せずにいました。 そんなある日、Aさんは、現場で足を滑らせケガをします。骨折でした。本来なら、業務災害で労災保険から給付がでるはずですが、会社から「働けないやつには辞めてもらう」と即解雇に。会社を退職する(解雇になる)と、要件を満たせば雇用保険からの生活保障として、次の仕事が見つかるまで失業手当が受給できますが、ケガをしているAさんは、仕事ができない状態だったため、国の制度を使えずに過ごしました。しばらくは少しの貯蓄とでなんとか賄っていましたが、次第に底をつき、家賃や水道光熱費など、口座振替にしていたものが、引き落とし日に残額がなく滞納していく月が出てきます。 Aさんは、スマートフォンで動画をみたり、ゲームをしたりするのが唯一の楽しみでしたが、残額がなく、携帯電話もとめられてしまいます。家賃を滞納していたため、とうとう強制退去の通知がきました。