Xで一番「バズった」都知事選候補は石丸氏ではなかった!? 動画で躍進した石丸氏、自民や立民も見習うべき?【データ・インサイト】
再生数が公式を大幅に上回り、計3千万回に達した応援アカウントもあった。期間中に動画が計100万回以上再生された応援アカウントは16も確認されたという。公式と16アカウントを合わせた期間中の視聴数は、計1億5千万回に達するというのだから驚きだ。 ▽石丸氏は「ネットとリアル」を融合 なぜこんなにも拡散したのだろうか。 中村代表はこう分析する。「石丸氏は街頭演説も積極的に行い、発言などを『どんどん切り取って下さい』と呼びかけることで動画を拡散させ、インターネットとリアルを融合させた」。こうした戦略が無党派層が多い若年層に「刺さった」と見ている。 鳥海教授も「石丸氏はバズることの重要性を理解し、再生数につながる話し方をしていた」と指摘。ユーチューブやSNSに慣れ親しむ世代など、テレビや新聞をあまり見ない層の支持を獲得したと語る。 また、石丸氏の切り抜き動画が広がった背景に「アテンションエコノミー」があると分析する。再生回数が増えれば増えるほど広告収入を得られることが、応援アカウント運営者のやる気をかき立てたというのだ。鳥海教授はこう話している。「石丸氏は、第三者の金銭的欲求や承認欲求に応え、コストをかけずに有権者に受ける動画を作ってもらえるシステムを作り上げたと言える」
一方、蓮舫氏は動画に視聴者がコメントできないように設定していたことから「ユーチューブ動画をバズらせようという考えはなかったのだろう」と推測した。 ▽自民党や立憲民主党も石丸氏を見習うべき? 「インターネットの使い方に課題がある」。蓮舫氏を応援した立憲民主党の東京都連が7月下旬に開いた会合では、都知事選の結果を受けてこんな意見が出たそうだ。自民党関係者も都知事選後にこう話していた。「無党派層の支持拡大に向け、SNSを頑張らないといけない」。 次期衆院選を控える与野党にとって、SNSの重要性がこれまで以上に強く認識されているのだろう。石丸氏のやり方を見習う既成政党も出てくるのだろうか。 法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)は「石丸氏は日本のSNS選挙元年を印象づけた」と語る。候補者と有権者双方に対し、SNSの影響力は今後も高まっていくと予想している。 一方、こうも指摘した。「SNS戦略の強化が既成政党に有用とは限らない」。自民や立民などの政党には、支持者だけでなく「アンチ」も多いからだ。発信を強めれば反対勢力も勢いづき、結果的に無党派層の支持獲得に役立たない可能性があるという。「新興政党以外は支持者を固めることの方が依然として有効だ。今後も組織票頼みの選挙が続くのではないか」