『海に眠るダイヤモンド』美術装飾が甦らせる昭和の情景 担当者に聞く
さらに、昭和30年代の端島を描くうえで、セットが茶色やモノトーンに偏りがちになる課題を克服するため、岩井氏は折り紙細工や色彩豊かな小道具を活用。「地味な画にならないよう、生活感や温かみを添える工夫を凝らしました」と前田氏。こうした工夫は、単に美術装飾の一部にとどまらず、物語全体の没入感を高める重要な要素となっている。 「美術装飾は視聴者に直接届く仕事です。背景の一部であったとしても、物語を深める力があります。特に本作はチーム全員の尽力の結晶だと自負しています」と前田氏。チーム全体で築き上げた端島のセットは、昭和の暮らしの記憶を鮮やかに甦らせている。 「時代を感じられるディテールを、ぜひ隅々まで見てもらえたら」。 前田氏の言葉には、昭和の情景を紡ぎ出したクリエイターたちの熱い思いが込められている。 本作で描かれた端島の姿は、単なるドラマの舞台としてだけでなく、当時の生活文化を後世に伝える記録の役割も果たしている。 「端島に生きた人々の記憶を再現し、その暮らしを映像で表現することには大きな意味があると思います」と前田氏は言う。現代では観光地としての側面が注目される端島だが、その背後には多くの人々が生き、働いた記憶が刻まれている。本作が描く端島の姿は、過去を学び、未来を考える手がかりとなる。昭和の端島に生きた人々の物語は、今なお日本社会に考えるべき多くのテーマを投げかけている。