ある日いきなり難病が発覚…「薬漬け」になったカリスマ経営者が感じた「医者と薬の限界」
薬まみれの毎日に
しかし、症状はまだ治まったわけではありません。 この病気の治療に使われるのはステロイド系の薬で、副作用がおきる可能性もあるため、二ヵ月に一度は必ず病院へ行って血液検査を受け、検査結果に応じて薬の量を調節してもらっています。 服用している薬は全部で七種類。しかも、毎日朝晩飲む薬、朝だけ飲めばいい薬、週に一度曜日を決めて飲む薬などがあり、複雑きわまりない。これまで何十年も薬と無縁で過ごしてきたのに、いきなり七種類もの薬を飲まなければならなくなり、私の頭の中はいつも薬のことでいっぱいです。 処方された薬はきちんと飲み続けていますが、血液検査の結果も、私の身体に出てくる症状も、ほとんど変わっていません。そのうえ、四ヵ月間の自宅療養で体力が急激に落ち、気持ちは前向きでも身体がついてこない。こうした苛立ちから、「何のために俺は薬を飲んでいるんだろう」と思ってしまうこともあります。 このまま薬を飲み続けていいのか、減らすほうがいいのか。減らすとしたら、一回四錠飲んでいる薬を三錠にするのか、二錠にするのか、全部やめてしまうのか。選択肢はいろいろありますが、どれを選ぶかは難しい問題です。 たとえば、それまで四錠飲んでいた薬を、担当医と相談したうえで三錠に減らしてみたことがあります。すると、体調がちょっとよくなった。患者としては、「二錠にしたらもっとよくなるのでは」と思うのが人情です。私も医師にそう言いましたが、「それはどうなるかわかりません」という答えが返ってきました。 どんな病気にも言えることだと思いますが、症状が少し改善したからといって薬を減らしたり中止したりすると、かえって悪化してしまうことがあります。特に、私の場合は原因不明の病気なので、医師として「薬をどの程度まで減らしていい」と断言はできないと言うのです。薬がすべての症状を改善するわけではない。どうやったら治るのか、医者でもわからない病気はある――。 薬を飲みはじめてからの私は、医師と薬の限界など、いろいろのことを学びました。 さらに連載記事〈ほとんどの人が老後を「大失敗」するのにはハッキリした原因があった…実は誤解されている「お金よりも大事なもの」〉では、老後の生活を成功させるための秘訣を紹介しています。
丹羽 宇一郎