<春へのキセキ・天理>/上 コーチ陣の「活」で一変 慢心改め秋の県予選V /奈良
天理の新チーム初の公式戦となった2020年秋の近畿大会県予選。「気の抜けたプレーが目立ち、試合をなめているようだった」。コーチ陣は、その前半戦を厳しく分析する。初戦からコールド発進と順調に見えたが、試合結果とは裏腹にエラーや送球ミスが連発、「試合内容はさんざんだった」。 初戦の法隆寺国際に7―0、2戦目の橿原に9―0と、いずれも七回コールド・零封勝ち。瀬千皓副主将(2年)や杉下海生副主将(同)は、「自分たちは勝ち続けられるという自信があった」と振り返る。しかし、実際は判断ミスや失策など練習では見られない雑なプレーが続出した。スタンドプレーも目立ち、内山陽斗主将(同)は「ひたむきさが感じられず、自分たちとは別のチームのようだった」と語る。 準々決勝の御所実戦でも、11―6で勝利したものの、すきだらけのプレーは改善されなかった。危機感を抱いたコーチ陣は、試合を終えたばかりの選手たちを集め、現地で緊急ミーティングを決行。「過信せず、最後まで気を抜くな」「チームのためにできることを考えてプレーを」などと厳しい言葉を投げかけた。 「今のままでは勝てない」。我に返った選手たちは、その日を境に一変する。準決勝の畝傍戦では、ミスが消え、バントや単打で確実につなぐ野球で得点を重ねた。智弁学園と対戦した決勝は一回に先制を許したが、二回に逆転。その後同点に追い付かれるも、全員で声を掛け合って踏ん張り、七回に6点をもぎ取って8―2と突き放した。 チーム一丸でつかんだ優勝。しかし、選手たちにとってそれ以上の収穫は、自分たちを見つめ直す過程で学んだ、チームのために戦い、勝つにふさわしいチームになる、大切さだった。「前半戦のチームのままなら優勝はなかったかもしれない」とコーチ陣。「近畿大会もチーム力で優勝してみせる」。メンバー全員が固く心に刻んだ瞬間だった。【広瀬晃子】