長寿の秘訣は「館山の気候」 県内男性の最高齢107歳 強瀬衛人さん(千葉県)
県内の男性で最高齢となった館山市那古の強瀬衛人(こわせ・えいと)さん、御年107歳。現在も姿勢よく歩き、庭の草取りにも精を出している。市内最高齢者でもあり、「とにかく、生きてるんだなぁ」としみじみ。長寿で健康の秘訣(ひけつ)を尋ねると、「館山は暖かく、気候が体に合っていたから」と語る。 強瀬さんは、1917(大正6)年4月1日、現在の埼玉県熊谷市で、11人きょうだいの3人目として生まれた。15歳で東京の鍛冶屋で勤め始め、日中戦争で中国へ出征。復員後、結婚し、池貝鉄工所(東京)で働いていた44年、戦時中の工場疎開で現在の鋸南町に転居した。2男1女を育てながら、ディーゼルエンジンなどを扱う館山の工場で機械工として勤務。55歳の定年まで勤め、その後も自営の製作所でディーゼル部品を作っていた。 仕事以外では多趣味な一面を持ち、釣りやソフトボール、ゲートボール、詩吟、将棋などに没頭してきた。手先の器用さやきちょうめんな性格は、今もなお健在。機械工として染みついた“職人技”で、廃材を活用し工作をするのが得意だという。 現在は、南房総市内のサービス付き高齢者向け住宅に住み、週3日デイサービスで過ごす。食事やトイレ、部屋の片付け、洗濯物を畳むのも自力。「嫌いな食べ物はなく、何でもよく食べ、体を動かすのも好き」と話す。 デイサービスが休みの日は、刃先が4本に分かれた「備中鍬(ぐわ)」を両手で振り下ろし、施設周辺の草を黙々と取っていく。「あっという間に草が伸びるなぁ」。今も猛暑の日を除き、朝の草取りを日課としているが、「家族に止められるんです」と苦笑いする。 出征した日中戦争では、中国で食中毒にかかり療養していたところ、同じ部隊の他の隊員は戦死した。その後も幾度となく病気やけがといった命の危機を乗り越え、80歳で胃がんを患うが、それも克服。長男の和夫さん(78)は「何回も死にかけているのに、こんなにも長生きするとは驚き。(76歳で亡くなった)母が『(強瀬さんの)やりたいことを止めちゃ駄目。好き勝手にさせてあげて』とよく口にしていて、それがよかったのかな」と話していた。 県内男性の最高齢になったことを祝い9月、孫4人が強瀬さんの元を訪れ、「祝・千葉県男性最高齢」と刻まれた置き時計をプレゼントした。ひ孫も6人いる。孫たちのエールを受け、強瀬さんは「これからも動けるうちは動いて、元気でいたい」とはにかんだ笑顔を見せた。 (安藤沙織)