優雅に激しく 大阪城東・諏訪神社の幻想的獅子舞
2人の舞い手が連携し幻想的な獅子舞を披露
宵闇が迫る本殿前の広場に、12枚の畳が裏返しに敷かれ、舞台が整う。氏子たちが周囲を取り囲み、獅子の登場を待つ。 午後7時、獅子が社殿から現れ、階段を下りて舞台へ。舞い手は2人ひと組。獅子頭と前脚を担当する「頭役」と、胴体や後ろ脚を受け持つ「胴役」が、息を合わせて舞う。獅子の中の舞い手には、外の景色は見えない。センマンと呼ばれる介添え役が、舞台から飛び出さないよう気を配る。センマンは舞い手の経験者たちだ。 横笛や締太鼓、チャンポン(銅拍子)によるお囃子が、境内に響く。シンプルで叙情的なリズムやメロディが繰り返し演奏されることで、徐々に高揚感を醸し出す。 獅子は想像上の架空の生き物で、獅子舞は雄々しさや荒々しさで邪気を払う。獅子頭主体の一般的な獅子舞に対し、よりリアルな総毛の毛獅子では、舞い手のふたりが連携し、一頭の獅子になり切ることが求められる。 生きた獅子に迫るため、多彩な技が培われてきた。舞い手が肩車を組み、獅子頭を掲げて舞台を一周する「カタクマ」。目の前に見上げるような巨大獅子が出現し、周囲からどよめきが起こる。 獅子頭と胴体をくねらせながら舞台を動き回る「ドウチュウ」。獅子頭を8の字を描くように左右に揺らす「カマクビ」。白いたてがみなどがふわりふわりと闇の中に揺れ、獅子をより大きく感じさせる。毛獅子の特色を生かした幻想的な舞いだ。 胴役の舞い手が三角倒立をして、脚を交互に動かす「タッチョコ」。逆立ちの辛い姿勢での演技が続く。胴役が打ち込んできた日ごろの鍛錬の賜物だ。
起伏に富んだ舞いを経て最後に最高潮へ
獅子舞は30分前後におよぶ長丁場。獅子の重さは35キロに達する。よろいのような重さに耐えながら激しく舞い続けるうちに、舞い手は獅子の中で酸欠状態に陥るという。とはいえ、人の気配は消さなければいけない。 起伏に富んだ舞いの途中で、獅子が動きを止めたとき、センマンがやかんから水を汲み、さりげなく獅子の足元から差し入れ、舞い手に手渡す。水分の補給に加え、場を清めて心を静める。大相撲の力水に通じる意味合いがあるのかもしれない。他にも華麗な技や取り決めがあるが、奉納行事の神秘性を保つため、詳細にふれるのは慎みたい。 やがて獅子舞は最高潮へ。お囃子が一段と高まる中、獅子は舞台からはみ出すほどの勢いで、大暴れを繰り返す。観客たちは逃げまどいながらも獅子を見守り続ける。邪気を払い、福を呼び込む獅子との接触を、半ば心待ちにしているからだろう。最後はセンマイに抱きかかえられた獅子が、本殿に一礼をして社務所へ退場する。