優雅に激しく 大阪城東・諏訪神社の幻想的獅子舞
観客がいるからこそ舞い手は力を振り絞れる
今年は30代コンビと20代コンビが獅子舞を奉納した。宵宮の30代コンビはベテランらしい優雅な舞いを披露。本宮に登場した20代コンビは、若々しい迫力あふれる舞いが印象的だった。 30代組は幼馴染で、ともに15歳で舞い手を目指す。暑い盛りに路上でもけいこに励むなど、技を磨き連携を深めてきた。今では阿吽の呼吸で心を合わせ、一頭の獅子を演じることに徹するという。 20代のふたりに舞い手志願の理由を聞くと、ともに「かっこよさに憧れました」と、率直に明かす。決意に揺らぎはない。先人たちに鍛えられながらけいこを積む。獅子舞奉納を終えた直後、「力を出し切りました」と満足げな表情を浮かべた。 慣れないうちは5分だけでも体力が持ちそうにない。鍛錬を重ねても、30分も舞い続けると、体力の消耗は限界に達するという。にもかかわらず、最後にもっとも激しい動きに挑む。人智を超えた気力、体力は、どこから湧いてくるのか。OBを含めて舞い手たちは口を揃えて言う。 「観客の後押しがなければ、存分に舞うことはできない。観客がいるからこそ、持てるすべてを振り絞ることができます」 単なる伝統芸能の公演ではない。舞い手や囃子方と観客が一体となって、神前で獅子舞を奉納しているのである。
長老格から子どもたちまで幅広い世代がけいこに集結
秋祭りの数日前に、神社を訪ねた。集会所で獅子舞の総仕上げのけいこが行われる。夕刻ながら、けいこ場は思いの外、賑やかだった。獅子舞保存に関わる家族に連れられてやって来たのだろう。子どもたちの元気な声が弾ける。 長老格から中堅、若手、子どもたちに至るまで、幅広い世代が集う。お囃子は女性たちが主役だ。色鮮やかなネイルアートを施した可憐な指で横笛を吹く若い女性もいる。乳飲み子が這い回り、もう少し大きな子どもたちは横笛を構えて、見様見真似で吹いてみる。 諏訪のまちで生まれた子どもたちは幼いころから、地車や獅子舞にふれながら育つ。保存会の会員はおおよそ80人。一晩で獅子舞を演じる舞い手は2人だが、多くの人たちに支えられていることがうかがえる。 戦後昭和の一時期、獅子舞が途絶えた時代があった。昔を知る長老たちが苦労して復活させた。今は地車ともども獅子舞も、地域に根付く。森田憲次会長は「次代を担う人材を育てながら、伝統文化をしっかり受け継いでいきたい」と話す。 本来の獅子舞は、境内の照明を落とし、わずかな提灯の明かりだけを頼りに、厳粛な雰囲気の中で奉納される。今年は当サイトの動画撮影の便宜を図るため、一部の照明を灯して獅子舞が奉納されたことを、最後に付記しておく。保存会関係者に感謝したい。 来年の秋祭りは10月21、22両日に開催される予定だ。獅子舞は2日間とも午後7時から奉納される。諏訪神社は菅原道真ゆかりの神社で、境内には道真公が腰を下ろしたとされる腰掛け石も継承されている。祭りの下見を兼ねて訪ねてみるのもいいのではないだろうか。 (文責・岡村雅之/関西ライター名鑑)