腐っていたのは山根前会長だけでなかった……日連幹部会見に見えた矛盾と嘘
井上尚弥が育ったアンダー15の大会はプロジムが中心になってスタートをきったジュニア世代の大会であり、その第一回大会の優勝が井上尚弥。この時点では、日本連盟主導の大きなアンダージュニア世代の大会はなかったのだ。その後、日本連盟も同じような大会を始めたことは事実だが、昨年、突然、プロが主催するアンダージュニア大会に参加した小中学生は、高校進学後はアマ登録ができず、インターハイなどの大会に出場できない旨を通告するなど、ジュニア世代の底上げを邪魔するようなルールを作った。これも山根元会長が主導したもので、今回、再興する会も告発状の中に入れ込んだが、吉森専務は、それらの経緯を無視して、一方的に山根会長の功績として語るのである。 また再興する会が求めている山根元会長の説明責任については「様子を見て、その場を設けたい。だが、会長は、こんなことを言ったら、あれですが、おおざっぱで、細かいことを知らない。あまり(山根元会長は細かいことを)わかりません。お体と年齢的なこともあり(説明を)やるなら私がやります」との見解を述べた。 会長が細かいことを知らないのならば、告発側が訴えているものは、すべて組織的不正ということになる。「部分的なことは知っている。(報道された告発については)個別には(会長は)話をしている」と、あわてたが、一部のテレビインタビューでの釈明は、説明責任とは言わない。 吉森専務のたった1時間の会見で明白になったのは、側近も含めて組織全体が腐りきっているというとんでもない実態である。現幹部の任期は、来年2月まであり、第三者委員会の立ち上げ、調査、そして、同時に8月にはアジア大会、公認コーチ講習会、アンダージュニアの東西の王座決定戦、国体など行事が進行するため、それらの運営に支障が出ないように、しばらくは、現理事の体制のまま、運営を続けることを吉森専務は明らかにしたが、一刻も早く退陣してもらわねば、山根体制へ揺り戻しが起きる危険性さえ感じさせる。 新体制をスタートするためには、臨時総会を開催して、新しい30人の理事を選出、そして、その新理事の互選により新会長を選ぶという手続きを経なければならない。理事は、全国9ブロックの代表理事で、2期以上理事を務めていることが条件になるのだが、ぐずぐずしている時間はない。 この日、会見した再興する会の戸田裕典弁護士も、その点について「各種報道で多くの理事が辞任の意向を固めていると出てきておりますので再興する会の中で意見がまとまれば、第三者委員会の調査を待たずして臨時総会を招集請求するのか、今後の展開を検討していきたい」という考えを明らかにした。 すでに再興する会では、各都道府県に臨時総会への賛同を求める文書を配付しているという。 東京五輪まで残り2年。第三者委員会の調査により、不正の真相を追究することと同時進行で、真の改革を実行するための新体制への移行をスピード感を持って進めなければならない。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)