初夏の箱根旅行へ。花とアートの競演を愛でる大人ピクニック
豊かな風土に彩られた日本には、独自の「地方カルチャー」が存在する。そんな“ローカルトレジャー”を、クリエイティブ・ディレクターの樺澤貴子が探す連載。山間を染める桜や藤を見送ったころ、訪れたのは新緑を迎えた箱根。強羅に誕生したスモールラグジュアリーの宿を拠点に、緑雨の森と戯れた 【写真】初夏の箱根旅行へ
《CAFÉ&SEE》「ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ」 花とアートの競演を愛でる大人ピクニック
あるがままの森の姿も美しいが、意図的に構築された庭もまた美しい。デザインした人物が類稀なセンスの持ち主であれば、なおのことである。ここ「ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ」は、箱根の原生林と都会的な感性が絶妙に交差する庭園として、長年の構想を経て2022年4月に誕生。人間の手を加えすぎず、それでいて森の整備に繋がるように、自然を尊重しながら守ることを核として作り上げられた。 敷地内には、ガラス張りのパビリオンが点在し、四季折々の花々とともにシーズナブルな企画を展開。取材で訪れた頃は、ちょうど2周年のアニバーサリーイベントとして春の花が咲き誇り、ニコライ・バーグマン氏によるフラワーインスタレーションを展示。さらに、デンマークのアーティスト、エスケ・トゥボルグによる「FLOW, US」の作品が園内の随所に彩りを添えていた。
取材日は雨模様だったが、それも森を育む恵みの雨と思えば、目に映る新緑が一層の瑞々しさを増すように思えた。チェックインを済ませると、レインブーツのレンタルがあると聞き、この雨を逆手にとって楽しもうと気分が上がる。
カフェでサンドイッチとドリンクをテイクアウトし、意気揚々と園内を巡る。椅子やテーブルがセットされているパビリオンが3箇所あるため、雨のピクニックも安心して楽しめる。ガラス張りの天井に降り注ぐ雨と木立の雫が耳をくすぐり、無数の花々とアートが視界を満たす。やまない雨に怯むことなく、小径を進むと足元がふかふかとしていることに気づく。枯れたクマザサなどを敷き詰めた優しい大地は、雨の日でもぬかるむことなく園内を散策できるための演出だという。