「AIエージェント」構築を支援、スウェーデン企業Sanaが評価額5億ドルに
ストックホルムを拠点とする人工知能(AI)関連のスタートアップであるSana(サナ)は先日、5億ドル(約760億円)の評価額で5500万ドル(約84億円)を調達した。同社は、企業が独自のAIエージェントを構築するための仕組みを提供しようとしている。 スウェーデンのAIスタートアップであるサナは今年初め、ドイツの製薬大手のメルクや、米国のロビンフッドなどの顧客からの問い合わせの対応に苦慮していた。これらの企業は、セールスフォースのようなツールや社内のデータベースを理解するためのAIツールを必要としていた。そこで、サナの創業者であるジョエル・ヘラーマークは、戦略を転換した。 ヘラーマークのアイデアは、メールの作成や会議の議事録の作成、簡単なフォーム入力などを行うAIエージェントの無料版を提供することだった。この無料版は、半年で約10万件の登録を集めており、5人以上のチームには、ユーザー1人につき月額30ドル(約4570円)を請求している。 サナは、10月30日に自社の研究拠点の拡張と米国事業の拡大のために、5億ドル(約760億円)の評価額で5500万ドル(約84億円)を調達したと発表した。 NEAが主導した今回の調達ラウンドによって、サナの累計調達額は1億3000万ドル(約198億円)を突破し、欧州のAIスタートアップとしては、最大規模の調達額を誇る企業となった。2016年にヘラーマークが立ち上げた同社は今、社内のデータベースやセールスフォースを含むビジネスアプリに接続して、タスクの処理を自動化するAIエージェントを普及させようとしている。 ヘラーマークによれば、サナのAIエージェントはSlackや、ファイルや情報の共有サービスであるSharepoint(シェアポイント)を含む数十種類のソフトウェアと連携できるという。これにより同社は、企業向けのAIアシスタントを開発するユニコーン企業、Glean(グリーン)を含む資金力が豊富な企業と競合することになる。 サナのツールは、企業が使用する大規模言語モデル(LLM)に接続できるだけでなく、顧客の社内データを使ってAIエージェントをカスタマイズできるという。 今回のラウンドによって、サナの評価額は、前回ラウンドの2023年5月から倍増したが、同社はまだ、黒字化を果たしていない。 サナは、他にも新たな戦略的な動きに乗り出しており、9月にはテルアビブを拠点とし、AIエージェントを開発するスタートアップのCTRLを買収した。また、7月には、元グーグルのAI研究者であるオスカー・テックストレムをチーフサイエンティストとして迎え入れていた。
Iain Martin