「女将になる道を避けてきた」売り上げ昨対比70%割れ 京都料亭・和久傳を全国ブランドにした“逃げ腰”女将の「チームづくり」
女将になった年の売り上げは昨対比で70%割れ。スタッフが立ち話をしていたら「自分のことを言われているんじゃないか」とビクビクしてしまうほど。針のむしろだった、と振り返ります。 でも、しばらくするとチームのあり方に課題があることが見えてきました。母親の綾さんが作り上げた組織は、女将を頂点として放射状にスタッフがいるイメージ。だから、スタッフは自身で判断するよりも綾さんの意向を気にしがちでした。 バイタリティーがあり、引っ張っていくタイプの綾さんが女将だったときにはそれでよかったかもしれません。でも、桑村さんが理想とするのは、自分がいなくても自主的に動けるチーム。東京の販売店では、そのように考えたチームづくりをしていました。 桑村「大きな問題点が見えてきたら、『問題点がある』とちょっと嬉しくなりました。私が好きなことをやればいいんや、と」
ひそかに進めた「和久傳リバイバルプラン」
気を入れなおした桑村さんが心がけたのは、自分がまず人の目を見て話すこと。赤面症の桑村さんにとって、最初は恥ずかしく難しいことでしたが、やっていくうちに気づいたことがありました。目を合わせることは相手にとっても大事なことですが、それ以上に自分にとっても「脳が活性化する」ような行動だと感じたのです。 料亭の仕事は日々、同じようなことの反復練習。繰り返すうちにお客さんの潜在的ニーズがわかるようになります。そして、察して動いたことでお客さんから「なんでわかったん?」と驚かれることも。それが働く側にとっての喜びにもつながります。でも、目を合わせることを避けていたのでは、お客さんの気持ちも要望も察することはできません。 スタッフ一人ひとりとひざを突き合わせて話すようにすると、調理人とサービス部門との仲があまり良くなかったり、店舗同士が対立しがちだったりする課題も見えてきました。桑村さんはひそかに「和久傳リバイバルプラン」と名づけて改善に乗り出します。