トランスフォーマー、TIGER & BUNNY 日本発がハリウッドで注目される理由
ハリウッド実写化が成功するために必要なこととは
こうした状況のなか、数々の作品の映像化権をハリウッドが取得するという状況が生まれているが、過去実写化された作品をみても、興行的、内容的に多くが成功しているかといえば、そうとも言えない。平野氏は 「ハリウッドが権利を持っている日本のコンテンツには古いものと新しいものが混在しています。そのなかで、エンターテインメントとして今の時代にあったもの、あった作りにしなければヒットは難しい。『ゴースト・イン・ザ・シェル』も一定の評価を得ていますが、興行的に成功したとは言いづらいですよね。でも、もしも10年前に公開されていたら、違った結果になったかもしれない。もちろん、その当時と今では表現できる映像技術も全く違うというジレンマもある。しっかり市場を分析し、適切なタイミングで実写化することが企画にとって重要だと思います」と説明する。 そして、もう一つの重要な要素は、原作の理解度だという。田島氏は「『トランスフォーマー』の成功は、ハリウッド側が原作の魅力がどこにあるのか、しっかりと把握している点だと思います。作品の根底に流れているもの、たとえば『オプティマスプライムはこういう司令官だ』とか『メガトロンとスタースクリームの関係性』など、尊重しなくてはいけない部分を作り手が理解している。映画の第1作目は、こうした外してはいけない部分がしっかり反映されていました」と語る。 権利関係の契約は、かなり詳細なものであり、クリエイティビティの権限についても、詳細な取り決めがなされているという。最初の段階での取り決めが、作品の出来、不出来を左右すると言っても過言ではない。その意味では、原作側が“これだけは”と主張しなければならない部分を信念として持って臨む必要あるという。 コミック、アニメ、SF、怪獣・・・日本のさまざまなコンテンツがハリウッドで映画化されているが、全世界累計興行収入約4800億円・トランスフォーマーシリーズがなぜ大ヒットできるのか? それはコンテンツの持つ魅力を大切にしているからだと、平野氏は言う。作り手も宣伝する側も、この点を尊重する姿勢で臨まなければならないのではと続ける。 一方で「原作をなぞらえるだけの契約なら、興味を示さないでしょう。基本的にハリウッドは、既存のものの質を上げるという考えではなく、あくまで他の追随を許さないようなものを創作することが使命なので」と田島氏は述べる。この点については、平野氏も「レギュレーションを緩やかにした方が、広がりが期待できると思います。せっかくハリウッドで実写化するなら世界中で成功してほしいし、多様性を踏まえたさじ加減は重要ですね」と変えてはいけないもの、変えるべきもののバランスが重要だと説く。 ハズブロ社との良好な関係により、互いに試行錯誤を繰り返しながらコンテンツを成熟させた「トランスフォーマー」。平野氏は「デザインの発想と緻密さという日本ならではの特徴を兼ね備えたコンテンツだからこそ、スティーヴン・スピルバーグが目を付けた。被爆国の日本から生まれたゴジラも世界で愛される存在になっています。こうした日本らしいキャラクターはまだまだたくさんあるので、これからも世界で愛される作品を発掘してもらえたらいいですね」と展望を述べてくれた。 (取材・文・写真:磯部正和)