兼家らに翻弄された「よそ人の関白」藤原頼忠
2月25日(日)放送の『光る君へ』第8回「招かれざる者」では、朝廷内の実力者・藤原兼家(ふじわらのかねいえ/段田安則)が倒れる一方、まひろ(のちの紫式部/むらさきしきぶ/吉高由里子)の家に藤原道兼(みちかね/玉置玲央)が訪ねてくる様子が描かれた。 ■母の仇が突然目の前に現れる 藤原道長(みちなが/柄本佑)は、打毬(だきゅう)の試合で代役を務めた直秀(なおひで/毎熊克哉)を宴に招き、藤原氏の邸宅である東三条殿を案内した。道長は、直秀の正体が盗賊であると薄々感づいたまま、それを表に出そうとはしなかった。 宮中では藤原義懐(よしちか/高橋光臣)が花山天皇(かざんてんのう/本郷奏多)の威光を笠に着て、思うままに権威を振りかざしていた。これまで政権の中心的な存在だった、関白・藤原頼忠(よりただ/橋爪淳)、右大臣・藤原兼家、左大臣・源雅信(みなもとのまさのぶ/益岡徹)の3人が事態を深く憂慮するなか、兼家が突然倒れた。 陰陽師・安倍晴明(あべのはるあきら/せいめい/ユースケ・サンタマリア)は、花山天皇の寵愛した女御・藤原忯子(よしこ/しし/井上咲楽)の霊が取り憑いたことが原因と言及。道長ら息子たちは、思い思いに兼家を看病する。 そんな折、兼家の二男・道兼は、まひろの父・藤原為時(ためとき/岸谷五朗)に、父の兼家から虐待を受けていることを告白する。 親身になって話を聞いたからか、道兼は為時の屋敷にやってくる。母を殺した相手の突然の訪問に激しく動揺するまひろだったが、何も知らない道兼に母のことを尋ねられても気丈に返答し、その場を荒立てることなく収めた。 その夜、東三条殿に盗賊が現れた。警護の者たちに捕縛された盗賊団のなかに直秀の姿を見つけた道長の表情には、苦渋の色が浮かんでいた。 ■自ら関白の座を下りた初例となった 藤原頼忠は、藤原実頼(さねより)の二男として924(延長2)年に生まれた。母は左大臣を務めた藤原時平(ときひら)の娘。一時期、時平の長男である藤原保忠(やすただ)の養子となっていたが、947(天暦元)年に長男・敦敏(あつとし)が急死したことを受け、嫡男として実頼のもとに戻ってきている。 946(天慶9)年に即位した村上天皇のもとで、父の実頼は左大臣に就任。これに伴い、頼忠も昇進を重ねることとなる。 963(応和3)年には参議、968(安和元)年には従三位中納言、970(天禄元)年に権大納言に昇った。 同年に父・実頼が死去すると、当時の実頼の地位である摂政は藤原伊尹(これただ)が引き継いだ。実頼は伊尹が就任するまでの、あくまでつなぎ役だったらしい。翌年、頼忠は右大臣に昇進。伊尹によって引き立てられたようだ。