「先生も言いたいこと言えない」性教育で悩む教育現場 背景に“性交は一律に教えるものではない”はどめ規定「もっと踏み込んだほうがいいと思うことも」保健師が唱えるイマドキの性教育
「性交については一律に教えるものではない」はどめ規定
ただ、こうした性教育について、大石さんは「受けられるかどうかは“運次第”」だと言います。 (大石真那さん)「学校によって外部講師を呼ぶか呼ばないかも違ってきますし、外部講師として学校に行っても話せる内容が学校によって違う」 その背景にあるのが、「はどめ規定」です。日本の教育課程では、小学5年の理科で、生命の誕生として受精の仕組みを学びます。しかし、学習指導要領には「人の受精に至る過程は取り扱わないものとする」と書かれています。 また、思春期の身体の変化や妊娠について学ぶ中学1年の保健体育の学習指導要領には「妊娠の経過は取り扱わないものとする」と記載されています。つまり、受精や妊娠の前提となる性交については一律に教えるものではないというのです。これが、通称「はどめ規定」と呼ばれています。 (大石真那さん)「はどめ規定があるからこそ先生も言いたいけど言えないところがあるので、(はどめ規定が)ないほうが子どもたちがきちんと知りたいと思ったときに知れる環境が整うんじゃないかと思います」
どう実施するのか悩み続ける教育現場
この日、大石さんは南あわじ市を訪れました。南あわじ市の教育委員会や医師会などで作る団体から「包括的性教育」について講演をしてほしいと依頼を受けたのです。 (講演をする大石さん)「自分の身体がどうなっていて、何をされたらおかしいことでどう対応したらいいのか、ぜひ小さい子どものころから伝えていきたい。」「性教育は年に1回、もしくは3年に1回聞いただけでとても身につくものではない」 参加者からは、性教育の必要性はわかるが、どう実施していくのか、困惑する声も聞かれました。 (質問する参加者)「まず何をしたらいいのでしょうか」 (答える大石真那さん)「自分が性教育をどうとらえていたかなというのと向き合っていただくのが1つ。それから、“これからの性教育は人権をベースとしたもの”なんだというイメージを学校内で共有するだけでもだいぶ違うと思う」 (質問する参加者)「市町村や教育委員会がどのような対応をすべきか教えてください」 (答える大石真那さん)「(各学校の)凹凸をなくすために、市全体で包括的性教育をどう進めていくのか指針みたいなものが作れたらいい」 (参加者 小学校の養護教諭)「実際学校現場で働いていても、もう少し踏み込んでやっていったほうがいいと思うときもあるし、なお一層やらないといけない領域だという考えになりました」 (参加者 小学校の養護教諭)「各家庭の方針とか考え方もあると思うので、そういった面では、足並みをそろえて保護者の理解も得ながら進めることが必要。その点、進めるのは思い立ったらすぐにはできないし、計画的にしないといけないですね」
地域一丸で包括的性教育を進める
大石さんは、すべての子どもたちが包括的性教育を受けられるためには、まず大人が変わる必要があると考えています。 (大石真那さん)「人権をベースにして、自分と相手の心と体を守るとか同意のこととか、いろいろなことを含めたのが性教育なんだよという、性教育のとらえ方がまず大人の中で変わっていくといいのかなと思います」 (2024年7月15日放送 MBSテレビ「よんチャンTV」内『特集』より)