怪談中の高校生の前に靴下姿で駆けてきた体操服の女の子「え、幽霊じゃないよね」…連携プレーで迷子を保護
「世の中が人に冷たくなった」――。そう叫ばれて久しい中、富山県内では今秋、高校生らが迷子を保護する事例が相次いだ。突然の出来事にも、見て見ぬふりをせずに声をかけた生徒らは、口々に「自分じゃなくても誰かが助けたはず」「富山っていい街ですね」と言ってはにかんだ。(吉武幸一郎) 【写真】「夏といえば怪談」の怪
射水市内の路上で大雨の中、靴も履かずに迷子になっていた4歳の女児を保護したとして、射水署は県立大門高校3年の早川流維(るい)さん(18)と窪田花依(かえ)さん(18)、佐川急便小杉営業所の配達員紅井純平さん(26)に感謝状を贈った。
今月7日午後6時50分頃、早川さんと窪田さんは学校での自習を終え、最寄りのあいの風とやま鉄道・越中大門駅に向け、暗い住宅街を歩いていた。
「実はさ、学校のトイレで幽霊を見てね……」。話も盛り上がり、駅まで約200メートルに迫った頃、角から体操服を着た女の子が走ってきた。「え、幽霊じゃないよね」と驚きながらも、2人は「鬼ごっこでもしているのかな」と、女の子の後ろに目をやった。だが、保護者は来ない。
「これはおかしい」。女の子と年齢が近い妹がいる窪田さんは、目線を合わせようとしゃがみ、すぐに女の子を抱き上げた。すると、女の子はせきを切ったように泣きじゃくった。「ママがおらん」
2人が女の子を保護した直前、周辺エリアの配達を担当する紅井さんは靴下姿で走る女の子とすれ違った。ここ1年ほどエリアを担う紅井さんも、明らかな違和感を覚えた。そこで、「仕事よりも人の命が大切」と、配達を中断。すぐに駅でUターンして現場に戻ると、女の子を抱く2人と合流した。
紅井さんは2人に、雨宿りができる駅に向かうよう声をかけ、辺りに保護者がいないか捜し回った。だが、それらしき姿はなく、女の子が誤って外に出た可能性を考え、近くの保育所まで職員を呼びに向かった。
その間、駅に移動した2人は、女の子を安心させようと優しく声をかけ続けた。「運動会もう終わったん?」「プリキュアだと何が好き?」――。次第に落ち着きを取り戻した女の子の元には、紅井さんが呼んだ保育所の職員も駆けつけた。