外食は年間600回以上! マッキー牧元の発掘!地方の名店~高知編~
「イタリアには、正統リッボリータを認める協会があって、そこの認定をいつか取りたいと思っています」 夢みる変態は、リッボリータを作り続け、つまるところ賄いとなってしまうという。
食べました。優しい。実に優しい。 豆の甘みと野菜の甘み、そしてパンの甘みが境界線なく一つとなって、丸く、舌と心をなでる。イタリア人でもないのに「懐かしい」と言いたくなる、そんな味だった。
「へぇカーボロネロ(黒キャベツ)が入っているんだ」と言うと、 「そこをわかってくれるところがうれしい」と、相好を崩した。 その後も食べたが、次第に味がふくよかになっていた。
聞けば高知市の潮江地区で栽培されていた伝統野菜で、潮江菜(うしおえな)という山東白菜に似た野菜を入れているという。潮江菜、パン、玉ねぎ、にんじん、セロリ、白いんげん豆、黒キャベツが手を結んだたくましさがスープの中にあって、一口食べるたびに心が満たされていく。 飲みながら、愛する人たちのことを思い浮かべ、食べさせたいと願う、そんなスープだった。
イタリアで、どこにでもある野菜と余ったパンから生まれた素朴な知恵が、高知で生かされる。その瞬間に出会えたうれしさに体が震えた。 誠意を込めた丹念と常により良き答えを求める丁寧は、人の心を捉えるのである。 その真実に触れた瞬間でもあった。
それ以外の料理のことも書いておこう。 パニーニに挟んだ、日本では珍しい提供の仕方の「ランプレドット(フィレンツェの牛もつ煮込み)」。
「日本ではバスケッタ(深い皿盛り)での提供はあるけど珍しいですね」と言えば「はい狙いました」と、ニヤリ。
でもそれって、高知の人がどれほどわかってくれるんだと、突っ込みたくなる。 そのランプレドットはトロトロに煮込まれて、脂の甘みとサルサヴェルデの辛みのバランスが良く、思わず顔が綻びる。
ケイパーとオリーブの風味を効果的に利かせた「自家製バッカラのリヴォルノ風」は、なんといってもバッカラ(干し鱈)の戻し具合が、ピタリと決まっている。