激減する退職金、増加する早期退職…定年前の会社員は何を考え、準備しておくべきか
年収は300万円以下、本当に稼ぐべきは月10万円、50代で仕事の意義を見失う、60代管理職はごく少数、70歳男性の就業率は45%――。 【写真】意外と知らない、日本経済「10の大変化」とは… 10万部突破のベストセラー『ほんとうの定年後』では、多数の統計データや事例から知られざる「定年後の実態」を明らかにしている。
減少する退職金、増加する早期退職
長年勤めた企業で定年を迎えるとき、多くの企業で退職給付金を受け取れる。また、早期退職による割増退職金を給付する企業も増えている。ここでは、多くの企業で採用している退職給付制度をめぐる現状を確認する。
退職金にはもう頼れない
日本企業独特の慣行と言われる退職給付制度。厚生労働省「就労条件総合調査」によれば、2018年時点で同制度がある企業は80.5%、1000人以上の企業に限れば92.3%の企業が採用している。 退職給付制度は、退職時に一括していわゆる退職金を給付する退職一時金制度と、確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC)など退職後に年金の形で給付する退職年金制度で構成される。 退職給付制度を持つ企業のうち退職一時金制度のみをもつ企業が73.3%、退職年金制度のみを有する企業が8.6%、両制度を併用している企業が18.1%ある。 同調査では、従業員一人当たりの平均退職給付金額を集計している。それによれば、2003年に2499万円あった退職給付金額は、2018年には1788万円と、近年急速に減少している(図表1-7)。 退職金額が減少している背景には、バブル崩壊以降の低金利によって退職積立金が減少していること、などが影響している。 近年、退職金制度を取り巻く状況は大きく変わっている。 日本企業では歴史的に給付額が約束されている退職金のみを支払う企業がほとんどであったが、バブル崩壊による低金利などを背景に前払い賃金の性格が強い確定拠出年金への移行が進んでいる。 65歳までの雇用義務化による影響も大きい。企業としては、定年以降も生じる再雇用における人件費の補填のため、退職金を縮小させている側面もあるのだと考えられる。 過去、退職金制度は、従業員の老後の生活の安定を図るとともに、後払い賃金の性格を有し、長期雇用を促進して従業員を自社につなぎとめておく役割があった。 経済が右肩上がりで成長していた時代には従業員にとっても企業にとってもそのメリットは大きかったが、国とともに高齢化する日本企業において、長期雇用を推奨する退職金制度はもはや時代にそぐわないものとなってきている。 今後も各企業において退職金制度の縮減・廃止は長期的な趨勢として進んでいくだろう。