本郷和人「望月の歌」を詠む道長の目に月は見えていなかった?原因は『光る君へ』で毎回描かれる<あのシーン>に…平安時代ならではの病について
◆今も私たちを苦しめている「糖尿病」 当時、感染症ではないもので多くの人々を悩ませていた病気というと(1)結核(2)糖尿(3)脚気があげられます。 今では結核には治療法がありますね。脚気についてもビタミンB1を摂取することによって防ぐことができます。 問題は糖尿で、いまなお生活習慣病として私たちを苦しめています。 日本人は欧米人よりもインシュリンの分泌量が少ないので、糖尿になりやすい、という話を聞いたことがあります。食べることが生きがい、というぼくなどからすると、全く厄介な病気です。 なお平安時代の貴族たちは、予防医学という概念がないので仕方がないのかもしれませんが、簡単に亡くなります。 まず豚肉を全く食べませんので、ビタミンB1不足で脚気になる人が多い。20代で体がむくんで亡くなっている(=死因としては心不全)場合、その原因はおそらく脚気でしょうね。
◆糖尿の原因は「お酒」 夭折の事例が貴族の日記、「記録」にはしばしば記されています。 当時そうしたニュースに接した側は「ビックリ仰天」というよりも、「ああまたか」という感じだったと思われます。 糖尿の原因として考えられるものの一つに飲酒習慣が考えられるでしょう。 ドラマ内でも道長をはじめとして、毎回のようにお酒を飲むシーンが描かれています。 当時の貴族は清酒でなく、糖度の高い「濁り酒」を愛飲していました。 しかも「いい男」の定義が現代のようにスマートな男性、あるいは筋肉質な男性、ということだったらみんな競って節制をしたのかもしれませんが、でっぷり太った男性がモテたらしい。 そうなれば、経済事情が許す人は、盛んに飲んで食べたわけです。で、その結果として糖尿になる、と。 糖尿になるとやたらと喉が渇くそうで、「飲水病」とも呼ばれていました。 道長も糖尿でした。病になってからは、目がほとんど見えなくなっていたそうです。 一方、ドラマの予告によると、次回あの有名な「望月の歌」が披露されるよう。 ただし、そのころの道長は既に糖尿を患っていたはずなので、満月か少し欠けているか、あるいは半月くらいだったのか…。 正直なところ、よく分からなかったのかもしれません。
本郷和人
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