本郷和人「望月の歌」を詠む道長の目に月は見えていなかった?原因は『光る君へ』で毎回描かれる<あのシーン>に…平安時代ならではの病について
大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。ドラマが人気を博す中、平安時代の暮らしや社会について、あらためて関心が集まっています。一方、歴史研究者で東大史料編纂所教授・本郷和人先生がドラマをもとに深く解説するのが本連載。今回は「平安時代の病気」について。この連載を読めばドラマがさらに楽しくなること間違いなし! 『光る君へ』次回予告。万策尽きた三条天皇に「奥の手」を助言する実資。「大当たりだったわ」とつぶやく倫子の母・穆子。そして月を見上げる道長が詠む歌は… * * * * * * * ◆病の描写が続く『光る君へ』 登場キャラクターが次々に病に倒れている『光る君へ』。 前々回は道長が死の淵をさまよい、前回では三条天皇が目と耳を病んだ描写が描かれました。 特に病をきっかけに譲位を迫られている三条天皇がこの先どうなるか、目を離せない展開になっていますが、今回はそれら「平安時代の病気」について考えてみたいと思います。 そもそも平安時代の日本列島にはどれくらい人が住んでいたのか、という話はこの連載でも以前にしたことがあったかと思います。 西暦600年で600万人。これは聖徳太子の時代ですね。 それが関ヶ原の戦いの時点では1200万人。
◆<戦争>と<飢餓>と<病気> つまり1000年かけて600万人増ですので、あまり増えていないわけです。 藤原道長や紫式部がいた1000年頃ですと、1000万人くらいじゃないでしょうか。 世界でも、日本でも、人口の伸びを抑圧する要素として、<戦争>と<飢餓>と<病気>の三つがあげられます。 平安時代の日本に大きな戦争はありませんでした。 ですので、一般の人々を苦しめていたものとしては、残りの二つ。<飢餓>と<病気>を主な要素として挙げることができるでしょう。
◆古代日本と感染症 このうち<病気>というと、新型感染症に苦しめられた私たちの体験からすると、昔から存在する「感染症」がどうしても気になるところ。 人類をもっとも苦しめた感染症というと、ヨーロッパの人口の四分の一、もしくは三分の一を死に至らしめたというペストですが、これは日本にやってきていません。 またコレラも長い間、日本とは無縁でした。 コレラがやってきたのは江戸時代末で、「コロリ」と呼ばれました。 古代日本で猛威を振るったのは天然痘。それに麻疹=はしかです。 とくにはしかは、抵抗力のない子供たちの命を容赦なく奪っていきました。ですので抵抗力がある程度身につき、はしかに抗えるようになる男児5歳、女児7歳にお祝いをしたのです。
【関連記事】
- 『光る君へ』次回予告。万策尽きた三条天皇に「奥の手」を助言する実資。「大当たりだったわ」とつぶやく倫子の母・穆子。そして月を見上げる道長が詠む歌は…
- 『光る君へ』<私を何だとお思いでございますか!><俺のそばにいろ>道長と行成のやりとりに悶える視聴者。このとき副音声で語られていた行成の心境とは…
- <ポスト道長>を画策した三条天皇。秘薬「金液丹」に頼るもまさかの結末に…妍子との娘・禎子の物語にいいように使われた「三条の悲劇」について
- 『光る君へ』<オモシロイ>実資の変顔に絶妙なタイミングで反応した女の子。その名を知った視聴者「この溺愛が悲劇を…」「かぐや姫と呼んだとか」「全く目が合ってない」
- 大河ドラマ『光る君へ』脚本家・大石静「2話目を書き終えた頃に夫が他界。介護と仕事の両立は困難だったが、45年間で一番優しく接した時間だった」【2024年上半期BEST】